元々音楽の勉強をしていた人間が歯学部に入った。 歯学部の勉強は訳の分からないことだらけだった。 化学記号を見れば視界がぼやけ、薬学で薬品名を聞いただけで気が遠くなる。
そんな中で、たった一つだけとても興味を持ったのが「解剖学」だ。
歯学部に入学してすぐに「解剖学」がある。
私たちの場合は4人1組に一体与えられ、それこそ頭から足先まで解剖する。
献体された方の医学向上を願うお気持ちに敬意を払いながらの解剖だ。
最初は恐る恐る始めるが、次第に身体の不思議の虜になる。
体の隅々までに名称がついている。 筋肉がつながっている骨の小さな突起に一つにも名前があり、こんな部位と思われる箇所にも名前がついていて、しかもラテン語だったり聞いたこともない名称ばかりで、試験はそれらの名前だけではなく、それぞれの機能なども全て覚えてなくてはならない。
試験に合格するために朝から晩まで解剖の部屋で過ごすので、ランチなどはホルマリン臭の染み付いた手でハンバーグをかぶりつく。
食べられないと思っていたがそんなことなど言っている暇などない。
慣れとは恐ろしいものだ・・・・・
(続く・・・)