新原歯科医院

根本先生のブログ

カテゴリ: 歯の諸々

「もう一つの新型コロナ感染予防」(3)  

基礎疾患も持っていると新型コロナ感染が悪化しやすいことはすでに知られている。

 

ところで、先にも書いたが歯周病菌が全身に悪影響を及ぼしていることが明らかになっている。

 

例えば、歯周病菌は血管を傷つけて血栓を作り出す。

 

新型コロナ感染でも血栓による重症化が報告されているが、歯周病菌ですでに傷つけられている血管にコロナウイルスが侵入してくればダブルパンチだ。

 

(1)(2)と読めば何を言いたいかは説明するまでもないが、あなたの毎日の歯磨きをもう少し丁寧に行うだけで、新型コロナ感染の予防になっているのだ。

 

でもそれだけで十分だろうか?

 

自分でどんなに頑張っても口腔内を完全にキレイにすることは難しい。

しばらく前に、医者が自費でも受けたい検診は何か、というアンケートの第2位が「歯科検診」だった。

 

全身の健康のため、コロナ感染予防のために歯科検診を受けるというのは”転ばぬ先の杖”ということになる。

 

              GoTo歯科検診!

 

 

 

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「もう一つの新型コロナ感染予防」(2)

「ランセット」に米山武義・米山歯科クリニック院長と東北大学医学部の佐々木秀忠教授(当時)らの研究が掲載されたことがある。

それによると、高齢者施設において歯科衛生士が専門的な口腔ケアを行ったところ、誤嚥性肺炎が40%も減少し、興味深いことに認知症の進行まで抑えられた、というのだ。

「肺炎」による死亡率は高齢になるほど増えていくが、口腔ケアによってそれが抑えられるとしたら、口腔ケアをしないという選択肢はないように思うが・・・・

他の研究では、専門的な口腔ケアによってインフルエンザの発症率が1/10に減った、などの結果も出ている。

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「もう一つの新型コロナ感染予防」(1)

世界五大医学雑誌の中でもよく知られている「ランセット」というイギリスの医学雑誌がある。その2020年7月号に「The role of oral bacteria in COVID-19」(COVID-19での口腔内細菌の役割)に興味深い記事が掲載された。

歯周病菌が心疾患、脳疾患など多岐にわたって悪影響を及ぼしていることは以前から知られているが、「研究チームが新型コロナウイルス感染症で死亡した人を調べると、歯周病菌が大量に見つかったという。口腔内の衛生状態が悪い、つまり口の中が汚れていて歯周病などがある人は、感染した場合に重症化リスクが高まる可能性があることがわかった。」(プレジデントオンライン / 2020年11月12日)

歯周病菌が口の中の粘膜に傷をつけてウイルスが体内に侵入しやくし、また歯周病菌が歯茎に炎症を起こすことでウイルス感染を促進することがわかっている。

逆にいうと、口腔内を清潔にするとウイルス感染の予防につながる。

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歯茎の役割!

歯茎の役割とは?

「歯茎は歯を支える組織です。 一番外側を覆っているのは粘膜の歯肉で、細菌などが体内に侵入するのを防ぐ、ものをかんだときに加わる力から組織を守る役割があります。 健康な歯肉はサーモンピンクですが、炎症があると赤味が濃くなったり黒ずんできます。

 

歯肉の内側は骨(歯槽骨)で、歯を支えています。 その骨に歯を固定するのが歯根膜という繊維があります。」

 

歯茎が不健康だとどのような問題がありますか?

「歯茎が不健康になるとまず歯肉が出血しやすくなって腫れてきます。 そうなるとバイ菌が歯肉の中の方に侵入しやすくなり、骨や歯根膜を溶かします。 当然、歯が不安定になり、ひどくなると歯がグラグラして抜けてきます。 実際に抜歯の原因の理由の40%以上が歯周病です。」

 

歯茎を不健康にする原因などはありますか?

「歯茎を不健康にする原因はバイ菌の塊である歯垢です。 爪楊枝で歯の表面を軽くなぞると白いものがつきますがそれが歯垢で、ひとかきの爪楊枝の中には数千万のバイ菌がいます。 それを放置すれば歯肉に炎症を起こすだけではなく血管や体内に侵入して血栓を作ったり血管を弱くしたりもします。」

 

歯茎を健康に保つためにはどのようなことをしたら良いのでしょうか?

「歯茎を健康に保つためにすべきことは二つです。

第一:毎日の丁寧な歯磨きです。 できれば歯ブラシだけではなくフロスなどの補助器具を使うとより効果的です。

 

第二:定期検診を受けることです。 どんな丁寧な歯磨きでも磨ききれない箇所があります。 そのような箇所は特別な機械で専門的に綺麗にする必要があります。 そうすることで歯周病や虫歯の予防になりますし、万が一問題が見つかっても初期に治療ができるので問題が大きくなるのを予防できます。

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歯周病菌と全身疾患

(質問) 歯周病菌が脳梗塞や心筋梗塞などを起こす可能性がありますか? 

     

(答)まず誤解のないように・・・・

 

 心筋梗塞、脳梗塞などは一つの原因だけで起る訳ではありません。 歯周病菌はそれらの病気の原因の一つ、または悪化させる要因の一つになりうるということです。

 

 口の中には良いもの、悪いのを含めて何億もの菌が住んでいます。 口をちゃんと手入れしないと悪い菌によって虫歯は歯周病が引き起こされます。 歯周病で腫れた歯茎の中には沢山の菌が存在しますが、それが歯茎の中の毛細血管を通って全身に広がります。

 

 歯周病菌が血管を通るときに、菌が出す毒素が血管の壁に炎症を引き起こし、血管に傷をつけて動脈硬化を進行させ、血液に作用して血栓の原因になります。 実際に心筋梗塞などの場所から歯周病菌が検出されています。

 

 歯周病が悪化している人は、心臓病のリスクが1.5~3.5倍、脳梗塞のリスクが約3倍弱と言われています。

 

 例えば歯周病を処置しなければ、歯周病菌で血栓を作ろうとするので、それらの病気のために血液をサラサラにする薬を服用していても、薬の効果を低下させてしまいます。

 

 また心臓弁膜症がある場合には歯周病菌が心臓弁に付着して、最悪だと命に関わることもあります。

 

 それなので心臓弁膜症がある場合は歯科治療前に抗生物質を服用することもあります。

 

 最近では、心臓病や脳疾患の治療をする前に歯周病や虫歯をしっかりと治療するように指示されるようになってきています。 逆に言うと、そのような指示を出す病院はちゃんとしているとも言えます。

 

 歯周病は全国民の約80%が罹患していると言われています。 

 

歯周病を簡単に言うと歯周病菌が歯や歯茎に付着し、その炎症によって歯を支える歯茎やあご骨がダメージを受ける病気です。 実際に抜歯の原因の40%以上が歯周病です。

 

(質問) 歯周病の見つけ方は? 

 

(答)歯周病はサイレントキラーとよばれ、初期はほぼ症状がありません。  

           

もし歯茎から出血する、歯茎が腫れぼったいなどを感じたらなるべく早く歯医者に診察してもらいましょう。

 

それよりも、悪くなる前に歯医者で定期検診を受けるのが一番ですし、悪化させないための一番の予防策です。

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フッ素

1)歯科医院で「フッ素」を塗りましょう言われるけど、「フッ素」ってなんですか?

フッ素は自然界に沢山ある元素の一つで、海藻や野菜などの食品の中にも含まれています。

これを一定の濃度で使うと虫歯予防にとても効果的です

 

 

2)「フッ素」はどのような効能があるのですか?

酸などで溶け出した歯の表面の石灰分などをもう一度歯につけ戻す作用、いわゆる再石灰化の作用があります。

しかも歯の表面を硬くして酸に溶けにくくしてくれます。

虫歯菌が作り出す酸によって歯が溶かされるのが虫歯ですが、フッ素は虫歯菌の働きを弱めて酸を作る能力を抑える作用もあります。

 

 

3)フッ素は毒だって聞いたことがあるのですが?

確かにフッ素には毒性があるので大量に摂取すればとても危険です。

大量に摂取すると歯に斑点が出たり、歯の色が灰色になってしまうことも分かっています。

しかし歯科医院で使用したり歯磨き剤に添加されている量は緻密に計算された安全な量しか使われていないので、毒性を心配する必要はないと考えられています。

例えば日本ではフッ素を子供達に使用してから虫歯が減ったという調査結果があり、虫歯予防にも有効だということはわかっています。

 

 

4)フッ素入りの歯磨き剤の有効な使い方はありますか?

フッ素は歯に作用するの一定時間、歯の表面にとどまっている必要があります。

それなのでフッ素入り歯磨き剤でよく歯を磨いた後に口にたまった泡などを吐き出すだけにしましょう。 

もし口をすすぐにしてもなるべく少量の水ですすぐようにし、30分ぐらいそのままにし、それから口をすすぐと効果的です。

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食後すぐの歯磨きは危険(?)って本当?

最近「食後すぐの歯磨きは歯に悪いから、少なくとも食後30分以上経ってから歯磨きをした方が良い。」というのを耳にしたと思いますが、以前は「食べたらすぐに磨け!」と言われていたのにどうなの? という質問をよく受けるので少し解説してみます。

 

「食後すぐ磨いてはダメ」という理由の多くは「食後、口内は酸性になり、歯のエナメル質が酸でやわらかくなるので、そこでブラッシングすると、歯の表面を傷つけてしまう。」からというものです。

 

ところで話を戻します。 「食後すぐの歯磨きはダメ」という情報な元になっている実験があります。  それは酸性の強い炭酸飲料に歯の「象牙質」を90秒間浸した後に口の中に戻し、時間を置いてから歯を磨くというように、歯磨きの開始時間によって歯の象牙質に酸がどれくらい浸透するかを見る実験です。

 

実験で「歯の象牙質」を酸に浸していますが、人の歯の構造は、まず歯の一番表側に人体で一番硬い組織「エナメル」が覆っていて、その内側が「象牙質」という骨と似た組織になっていて、「象牙質」を歯ブラシで直接磨くということはありません。

 

それなので象牙質を用いた実験結果をすぐに日常の歯磨きに結びつけることは無理があります。

 

さらに実験では酸性の炭酸飲料水を用いていますが、これも普通の食事に置き換えて結論とするのも正確ではありません。

 

この実験は「酸蝕症」という、いわゆる「酸性」の強い物、例えばスポーツドリンク、柑橘類、お酢などを多く摂ることによる歯への影響を見る実験で、「虫歯」の実験ではありません。 

 

この結論で食後すぐの歯磨きはダメというのは早計すぎます。

 

もちろんお米を食べても口の中はある程度 酸性にはなりますが、唾液が十分に出ていれば酸は中和されます。  それよりも口の中が汚れた状態を続けることの方が問題になるので食後30分後などと気を使いすぎるよりも、いつも清潔を心がけるのが正解です。

 

「日本小児歯科学会」も「通常の食事の時は早めに歯みがきをして歯垢とその中の細菌を取り除いて脱灰を防ぐことの方が重要です。」と勧めています。

 

「ライオン歯科衛生研究所」も次のよう推奨しています。

「酸性の食べ物や飲み物を摂ったら、すぐにお水でうが いするなど、お口の酸性度を緩和するようにしましょう。  むし歯予防のためには、「食べたらみがく」、食事のあ とすぐに歯みがきする、といういつもの方法がおすすめです。」

 

しかし次のような場合は注意が必要です。

 *炭酸飲料を頻繁に飲む。 

 *間食をする。

 *柑橘類を頻繁に食べる。 

             など・・・・

このような場合は口の中が長時間、酸性の状態になるので、歯がボロボロになりやすくなります。

また特別な場合もあります。

例えば嘔吐を繰り返してしまう場合です。

胃酸はとても酸性度が強く、しかも嘔吐物が歯の表面に留まりやすいので、歯をボロボロにしてしまいます。

本当は嘔吐したらすぐに口を「重曹」でうがいするぐらいが必要ですが、せめて水で嘔吐物を洗い流すなどをした方が良いでしょう。

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口腔ケアからのインフルエンザ対策

(質問)インフルエンザが流行しています。 予防に口腔ケアが有効だと聞いたのですが 本当ですか?

(答)ある調査では高齢者施設で口腔ケアをしっかりと行った結果インフルエンザ発生が 10分の1になったという結果が出ています
またある学校では生徒の口腔ケアを行った結果、周囲の学校よりもインフルエンザ発生率が下がったという報告もあります。
このように口腔ケアはインフルエンザ対策に有効だと言えると思います。

(質問)口の中とインフルエンザの関係を説明してください?

(答)まず口腔内の細菌とインフルエンザ・ウィルスの関係を説明しましょう。
口腔内には細菌が何億もいますがその細菌によって作り出される酵素があります。
その酵素はインフルエンザのウィルスを粘膜に侵入しやすくしてしまうので、口腔内が汚れていればいるほど 沢山のウィルスが体内に侵入してしまいます。

さらに、口腔内の細菌が作り出す別の酵素は、タミフルなどのインフルエンザの治療薬の働きを妨害することが
わかっています。 ですのでせっかくタミフルなどの治療薬を服用しても口腔ケアをしないままでいると、薬の
効能を抑えてしまい、インフルエンザの治りにも影響してしまうのです。

(質問)それではどうすれば良いですか?

(答)簡単です。 「丁寧に口の中をキレイにする!」です。 いくつかのポイトをあげて見ます。まず、以前はインフルエンザ予防に「マスク」「手洗い」「うがい」があげられていましたが、今では厚生省の予防対策に「うがい」は入っていません。
口に入ってきたウイルスを「うがい」で流してしまうのですが、呼吸しているとひっきりなしに種々の細菌が口に入って来るので、1日に数回「うがい」しても間に合わないのです。

ある調査では「うがい」は「風邪」の予防には有効であり、インフルエンザにはそれほど、という報告があります。 ですのでやらないよりはやった方が良い程度に考えれば良いのでしょう。

口腔ケアで有効なのは「歯磨き」と「舌」の掃除です。まず歯磨きは特に寝る前に丁寧しましょう。口腔内の細菌は夜に増殖しやすいので、寝る前によく磨いて細菌を減らしておくのが有効です。 その意味では、朝食前にも磨きましょう。 夜に増えた菌を食事前に流してしまうのも一定の効果があると考えられます。
次に「舌」ですが、「舌」の表面に細菌が付着するので、歯ブラシで軽く掃除するか、指にガーゼを巻いて舌の表面をなぞってキレイにするのも効果的です。

最後に:インフルエンザの予防に口腔ケアだけが有効なわけではありません。 ゆっくり休んで体調を整える、暴飲暴食をしないなども大切ですが、口腔ケアはそれらの中の有効な対策の一つだということを覚えておいてください。

最後にもう一つ:手洗いする前の手で顔を触らないことも有効な対策です。
汚れた手で目をこすったり、鼻を触ると、手についた細菌を目や鼻の粘膜になすりつけることになるので、気をつけてください。

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「もう一度、リンゴを食べたい!」

米国での開業を切り上げて日本のとある病院歯科に勤務して間もない頃のこと、病棟から一本の電話が入った。

看護師からの電話で、入院中の患者さんが『もう一度、リンゴを食べたい!』と希望しているというものだった。

予約状況を調べると返事すると、電話の向こうで「実はこの患者さんは余命が長くて二週間と診断されている。 なるべく早くしてほしい。」ということだった。

私は何ができるかを調べるために直ぐに病棟に向かうと、病室には四十代の女性患者が微笑んで待っておられ、その横にはまだ十代の娘さんが不安げに付き添っていた。

その光景を目にして即座になんとかしようと決め、娘さんにお母さんを車椅子に乗せて歯科に連れてくるように頼んだ。

歯科に戻ると直ぐに技工所に電話をし、事情を説明して金属の被せ物を早急に作製してもらうように依頼した。 通常、このような被せ物の作製に一週間ほどかかるのだが、技工所からは一晩で仕上げます、との返事をもらった。

しばらくすると娘さんが押す車椅子に乗ってご本人が来られた。

早速、歯を削って歯型を取り、仮歯をつけてから、明日には被せ物が入るのでお出でください、と案内すると嬉しそうに頷いていた。

翌日、やはり娘さんに連れられてご本人が来られ、無事に被せ物を装着した。

治療が終わり支払いをしようとされたので無料ですと伝えると驚いた表情を浮かべていたが、微笑まれながら歯科を後にしていった。

実は、技工所からの請求書が「0円」となっていたのだ。

その後、どうしているのか気になったが病室に訪ねるのは遠慮した。

それから数週間経った頃だろう...

あの患者さんのご家族だという方が会いに来られた。

「実は、被せ物を作ってもらってから一週間ほどで眠りについた。 でも最後にリンゴを本当に美味しそうに食べていた。 人生最後の小さな希望を叶えてくれて感謝している。」と涙された。

この出来事から私の歯科治療への考え方が変わったように思う。

それまではある意味、機械的な治療だった。

虫歯があればそれを取り除いて補修する・・・今でも治療方法はそれほど変わらないだろう。しかしあれ以降、治療の向こうに患者さんの人生、日々の生活があることを強く意識するようになった。

同じ虫歯治療でもA案、B案 C案と複数の治療計画をたて、それぞれの治療が与える影響を可能な限り想定してみる。

患者さんにもそれを提示し、一番合っていると思う治療計画を選んでもらうようにしている。

被せ物の高さが1/10ミリ狂うだけで食事がうまくできなくなり、多大なストレスを与えることだってある。

たかが虫歯の治療かもしれないが、それが喜びにも苦痛にもなることを肝に銘じながら歯科医療を究めつづけたい。

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