歯の痛みの原因は多岐にわたります。虫歯で痛むのは当たり前で解りますが、虫歯以外の原因で歯が痛むことも多々あります。いろいろなケースがあり、原因を正しく診断することが非常に困難な場合も多くあります。また、痛みをすぐに抑えることが不可能なこともありますし、治療が困難なケースもあり、虫歯で痛む場合よりも、患者さんにとっても歯医者にとってもつらいことが多いのです。
また、副鼻腔炎や神経痛でも歯が痛く感じることがありますが、これらは原因が違うところにありますから、耳鼻咽喉科、等の担当範囲になります。
今回はよくあるケースで歯周病のことにふれてみます。歯周病と言う名前は頻繁に聞くようになりましたから、なんとなくイメージをお持ちだろうと思います。歯のまわりに歯垢や歯石が沈着し、それを放置しておくことにより、徐々に歯周組織(歯のまわりの歯根膜であったり、歯を支えている歯槽骨や歯肉)が破壊、吸収され、歯のぐらつきや、痛み、腫れ、と言った自覚症状が出てきます。その時点では、かなり症状が進行している場合が殆どです。
歯周病が原因で痛むのにもいくつか違う原因があります。そのひとつに、歯根膜(歯と骨をくっつけている組織で、同時にクッションの役目もしています)が拡大、炎症を起こし、歯が持ち上げられて、浮いてきたときに起こる痛みがあります。噛むときだけ痛むこともあれば、激痛がおさまらないケースもあります。
歯と歯槽骨の間の組織が怪我をしたと考えてみて下さい。噛むたびに歯の根が怪我をした組織をグリグリ押すわけです。例えば手に怪我をしたときにそこをグリグリしたら・・・。痛いでしょう?同じような事なのです。手に怪我をしたら、消毒して、包帯、バンドエイド等でカバーして安静にして治癒を待ちますね。怪我がひどいときは数日は痛み止めを使わざるを得ない時もよくあるでしょう。
同じように、歯周病のときも、刺激しないように(そこで噛まないように)消炎を心がけ、炎症がおさまるのを待つしかありません。こう説明してもたまにすぐ痛みがとれないのはおかしいと思い込んでいる方もいらっしゃって、困ることがあります。
歯周病の場合は痛み、炎症がある程度おさまるのをまってから、根本的な治療をしなければいけません。手を怪我したときには、そこが治れば終わりですが、歯周病の(今回話しているケースの)場合、原因は歯周ポケット内の歯垢、歯石などですから、それらを除去しなければまた繰り返します。そのたびに歯槽骨が吸収され、最悪の場合抜歯以外に方法がなくなるのです。
歯周病の治療は根気がいりますし、我々に出来ることはあまり多くありません。患者さんの頑張りと(治療、普段の手入れ、定期的なクリーニング等々)病気に対する理解が大事です。一生病気との闘いになります。虫歯よりも歯周病の方が歯をなくす原因としては多いということを知ってもらい、ご自分の大切な身体の一部である歯を守って頂きたいと切に思います。