「真夏の夜のジャズ」という有名なドキュメンタリー映画があります。1950年代の或る年の、ニューポート・ジャズ・フェスティバルの模様に、同時に行われていたアメリカズ・カップ(有名なヨットレースですね)の映像もすこし交えた記録映画(?)です。
その初めの方に、アニタ・オディーが出ます。有名なティー・フォー・トゥーの前に、Sweet Georgia Brown を歌います。私はこのシーンが大好きなんですねぇ。
監督の演出で多分違う時間のお客さんの、あくびするシーンとか、つまらなそうにしているシーンをうまく繋げているんだろう、と思うのですが、確かに歌い始めのところは、「いったい何やってんだろ?」みたいに感じる歌い方なんです。
ツーコーラス目で、リズムが変わり、歌が一変します。ほんとにかっこいい!彼女のインプロヴァイゼイションは、私のなかではエラに次ぐすごさです。Tea For Two ももちろん素晴らしく、彼女自身もその後のライブでは、度々「あの映画でやってた歌よ」と紹介していますから。
そんなわけで、私が大好きな歌の一つなのですが、実はこの歌を知らないアメリカ人男性は非常に少ないんです。
なぜかと言うと、この歌は、ハーレム・グローブトロッターズのテーマソングだからです。
Harlem Globetrotters は、1920年代後半からある、ショウ・バスケットボールのチームです。(チームは、毎試合真剣勝負をしている、と、公式にコメントしていますが)年間300試合近く(殆ど毎日ですね)、アメリカのみならず、世界中で試合します。
初期のころは、NBA(そのころは白人選手しかいなかったのでしょう)のチームと真剣勝負で勝ったこともあったそうです。
毎回、グローブトロッターズは全員黒人のチームですが、白人のチーム(いつも同じチームなのですが)と試合をして、ちょっとリードされますが、最後はすごいテクニックを使い逆転勝ちします。
私が子供のころは毎年日本にも来ていたように思います。魔法のようなテクニックに。子供心に強烈な印象を残しました。「僕もバスケットやりたい」と思いました。(実際には私はずっと卓球部だったんですけど)
そのチームのメンバーが、試合の前にドリブルしながらコートに入って来る時に、スィート・ジョージア・ブラウン(口笛ヴァージョン)が流れるんです。かっこいいー!と子供たちは大拍手!毎日のようにアメリカ中を回って試合している訳ですから、殆どのアメリカ人の子供たちは見てるんじゃないかな?
そんな訳で、ほとんどのアメリカ人の子供たち、特に男の子たちは小さい時にこの歌を聞きます。だからこの歌を知らないアメリカ人男性は非常に少ないんです。
ちなみに、バスケットファンの方はご存じの名前だと思いますが、あのウィルト・チェンバレンも一時このチームでプレーしてたそうです。
もう一度見てみたいなぁ。あの素晴らしいテクニックと、手品のようなトリックプレーに、目を真ん丸にして、びっくりして見てる子供たちを見たいなぁ。そして、ドリブルしながら走って入場してくるプレーヤーたち、そしてその時に流れる、口笛のスィート・ジョージア・ブラウンを聴きたいなぁ。