いろいろな原因で歯が冷たいものにしみる話をしてきました。原因がわかるとよいのですが、原因不明で痛みを感じるケースもあります。最後までわからないこともあります。
虫歯がなくとも、なんらかの原因(例えば外傷で)歯髄が炎症を起こしているとき、壊死に近くなれば電気歯髄診断機でわかることもあります。
ただ疲れがたまっていて体調不良のとき、睡眠不足のとき、原因はわかりませんが水にしみたり、咬合痛が出ることがあります。精神的なストレスがたまっているときにそういう症状が出ることもあります。
なぜそうなるのかわかりませんが、歯は思いもしないことから繊細な症状をともなうことがあります。
あるとき、ある患者さんがあっちこっちの歯が冷たいものに強くしみて、絶対虫歯だろうと信じて私のクリニックにかけこんでいらした事があります。目視でもレントゲンを撮って見ても、どこも悪いところが見当たりませんでした。
体調を聞くと、IT関係の仕事らしいのですが、忙しい時期で2~3週間睡眠時間が極端に少なくなっていて、徹夜も度々しているとのことでした。
おそらく体調によって、複数の歯が繊細で過敏になっているだけで虫歯ではないと、お話しました。しかし患者さんはこんなにしみるのに虫歯に決まっていると思っていますから、納得してくれません。
でも私も悪くない歯の神経をとったりするわけには行きませんから、こういうこともあるのだと言う事を何度も説明して、とにかく少しでも身体を休ませることをお願いしました。
とても不服そうに帰られましたが、予後を見るついでにクリーニングの予約を一週間後に入れました。当日、晴れ晴れとした表情でいらっしゃいました。仕事が一段落して2~3日ゆっくり休んだら、すっかり痛みがとれたとのことでした。
私も少し信頼を回復出来たし、なにより悪くないのに歯を削ったりしないですんだことが本当に良かったし、患者さんも喜んでくれてほんとうによかったと思いました。
人間の身体は本当にうまく出来ていると共にとても繊細でもあります。私たちは悪くなったところを元通りには出来ません。少しでも良くなるようにお手伝いしている、と言ったところでしょうか。