とても治療に苦労する症状の一つです。なんらかの原因で顎の骨の中に埋まっている歯根のまわりに膿がたまり始めて強い痛みや腫れに加え、熱が出ることもあります。
この写真は歯根嚢胞の例で、急性化膿性根尖性歯周炎とは違う症例ですが、これと同じように歯根のまわりの骨が溶かされ膿がたまります。レントゲン象では似通った映像になります。
骨は風船のように膨らみませんから、膿の量が増えるとまわりの骨に強い圧力がかかり、また炎症を起こしていますから、激しい痛みが出ます。
上のような写真は虫歯で歯髄が侵され壊死したために細菌が根の先から出て周囲の組織を化膿させたものがこのように映ります。
壊死した歯髄を取り除き、根尖まで交通させるとたまった膿が排出されて、圧力が和らぎ、痛みを抑えることが出来ます。
困るのはこの写真のように過去に虫歯でやられた神経をとる治療(根管治療)がなされた歯にこの症状が出たときです。
根管治療が不十分であったり、なんらかの刺激で神経(歯髄)をとったあとに(10年以上たってから出ることもあります)この症状が出ます。
痛みをとるためには膿を出して内圧を下げないといけないのですが、まずかぶせてある冠を削って壊してはずさねばなりません。
そしてなお写真で歯の根の中心に白く映っているコアーと言う金属(根を補強するためのものです)をなんとかはずさないと膿を抜く排膿路が開きません。これがとても時間のかかる作業になることがあります。
それらのことをするのに時間もかかるし削る振動は抑えられません。悪いことにこのような症状のときは炎症のせいで麻酔が非常に効きづらくなっています。
冠やコアーを除去するのもかなり難しいケースがあります。根も脆くなっていますから歯根が破折するリスクも高くなります。
なにもしなくても激痛に苦しんでいる患者さんは痛みをとるためのそれらの治療の振動での痛みに長い時間耐えなければいけないこともしばしばあります。
私たちにとっても患者さんが痛んでいるのを見ながら治療することはとてもつらいことです。でも患者さんを激痛から解放するためには少しでも早く治療を終えるように努めなければなりません。
悪いことは重なるもので、こうして苦労して治療を終えても成功率はおそらく7割程度であろうと思われます。2~3割は将来的に抜歯の適応になってしまいます。
苦しい治療もある。すべて治せる訳でもない。こういう難しい症状に移行しないように祈るばかりです。そしてそれらは殆どのケースで小さな虫歯から始まるのだ、と言うことを忘れないようにして頂けたら、と願っています。