歯科大を卒業するまでにひととおり専門医の仕事の基礎を習いました。小児科も基本的なことは学び、数人の子供の患者さんの治療もしました。
アメリカでは小児科も専門医としての訓練を受けて、試験に通って資格を得ます。歯科大卒業後にGraduate school へ入り専門的な知識とテクニックを身に付けます。
ですから私は本当に基礎の基礎しか知りませんが、知っている事を書いてみます。
まず、歯医者の待合室から一般歯科とは違うでしょう。お子さんたちが気持ちよく、楽しくなるような工夫をしている事でしょう。おもちゃ、人形、絵・・・、他にもきっといろんなものが置いてあったりするかもしれません。よく小児歯科の窓には楽しそうな絵がはってありますね。
私たちの時代には小児歯科医は白衣を着ませんでした。マスクもしません。子供が少しでも違和感を抱くことを避けるためです。元々白衣を着る一つの理由は自分の服を汚さないことですが、ここではそうも言っていられません。(一般歯科でも白衣を着ないドクターが多かったですよ)
ドクターは患者さん(お子さん)と話す時にしゃがんで目の高さを同じにします。大きな大人が上から見下ろして話すのは子供から見たら威圧感があるからです。
使う言葉にも気を付けます。使ってはいけない言葉が多々あります。「いたい」、「こわい」、「けずる」、「ちゅうしゃ」・・・いろいろリストがありました。その代替用語のリストもありました。(かなり忘れてしまいましたが)
怖そうな器具は極力見えないように心掛けます。逆に水や空気が出るシュリンジがユニットに付いていますが、水鉄砲のように遊ばせながら、こういうものを使うことけど、怖いものではないことが自然にわかるようにしたりします。
保護者は診療室に入れません。甘えるからです。親が助けてくれると思って泣いたりします。子供は割と打算的なところがあります。これも子供の純粋さのひとつかもしれません。
いろいろ楽しい話をしながら出来るだけ早く治療を終えます。乳歯は、永久歯に代わるまでの数年間痛まずに使えればよいので、大人の歯ほど丁寧に治療することもないのです。早く終わらせる、子供にとって楽に、という事が優先されます。
終わって帰りにはおみやげを貰います。小さなものでも貰えると嬉しいものです。こうしてお子さんたちが楽しい時間を過ごし、また遊びに来てね!と言ってさよならします。
何歳くらいの子にはどの程度の治療をするか、とか非協力児への対応の仕方とか、残念ながら、私はそこまではわかりません。専門的な訓練、学習はしていませんから。
子供のときの経験は一生つきまとうことがあります。歯医者ぎらいの人の大半は子供の時にいやな思いをしています。いい小児歯科で治療をうけられた方は比較的歯の治療に対する恐怖心が薄い方が多いですね。
私は子供が歯医者嫌いにならないように治療する自信は全くありません。そのためのトレーニングは受けていないからです。お土産もおいていないし、うちの待合室は子供にとっては殺風景なものでしかないかもしれません。私はシンプルでいいと思っておりますが・・・。
私が勉強したときから30年以上過ぎました。今はもっといろいろな工夫をしているかも知れませんね。日本の歯科大でどういう教育をしているのかは知りませんが、基本的には同じことをしているはずです。
若い親御さんたちには、子供たちのためにいい小児歯科を見つけてくれることを願ってやみません。そうして歯医者を好きな患者さんが増えてくれたらいいなぁ・・・。小児歯科の先生方、宜しくお願い致します!