8月も最後の週になります。時間は容赦なく流れて行きますね。
6か月、あるいは3か月に一度、必ず検診に来て下さる患者さんたちがたくさんいらっしゃいます。ついこの間お会いしたかと思ったら、「6か月立つのが早いですねぇ・・・。」こんなご挨拶になることが多々あります。
高校生のときに(だと思いますが)読んだ小説を思い出しました。時間を止める、と言うわけではないのですが、沈んでいく夕日を止める・・・、と言う話です。題名は覚えていません。
HG・ウエルズだったか、コナン・ドイルだったか・・・。さほどの読書家ではない私ですから、読んだことのある作家は限られています。ブラッドベリーでないことは確かです。SFならおそらくこの2人のどちらかですが、覚えていません。
その短編小説の詳しい内容も全く覚えていません。なにしろ40年以上前の記憶です。主人公が願い事を叶えてもらうと言う話なんですが、一つだったか、三つだったか・・・?
40年前に読んで、殆ど覚えていない詳細のなか、一つだけいまだに鮮明に記憶に残っているのはその願い事が成就した結果なにが起こったのかと言うことです。「彼は沈みゆく夕日を止めて下さい。」と願ったのです。
彼の目の前で夕日が止まった瞬間、彼は空中を漂っていました。周りにいろんなものが流れています。そしてすぐに意識は途切れました。
太陽は朝、東から昇り、夕方に西に沈みます。これは実は太陽が地球の周りを回っているからではなく、地球が自転しているからだと言う事は、みなさんご存じのことです。
夕日が沈むのを止める、と言う事は、地球の自転を止めることになるわけです。
地球の円周は4万キロ、それが一日で一周しますから、赤道上では地表は時速約1700キロ近くで動いていることになります。なんと音速より速いんですね。
その自転を止めれば、慣性の法則により、地表の物質はすべて時速1700キロの速度で飛ばされることになるのです。(日本の緯度あたりだと、その半分くらいのスピードでしょうか?)電車が急ブレーキをかけたときと同じです。ただスピードが半端じゃありません。
彼の願いを叶える事で人類を滅亡させてしまったのです。
極点ではどうか?とか、自転を地球のどの部位で止めるのか?とか、細かい事を言うと終わらなくなってしまいます。単純にストーリーを楽しめばいいと思います。
理系の私にとって、この結末がとてもロマンチック(おかしく聞こえるかもしれませんが・・・)だったんですね。物理学のロマンです。ストーリーの詳細は全く覚えていないのですが、この結末だけ記憶にしっかり残っているのです。
ちなみに地球の公転速度(太陽の周りを回る速さ)は時速約10万キロ(自転速度の約60倍です)だそうですよ。私たちはたった今、時間の流れと共に(太陽を中心とした相対的な関係ですが)時速10万キロのスピードで宇宙を旅しているのです。なんとロマンチックな事ではありませんか?
物理、数学に興味のない方には全くピンとこない話かも知れませんね。ただひとつだけ聞いて頂きたいのですが、もしもどなたかが、アラジンの魔法のランプを手に入れたとしたら・・・・。
願い事を言う前に、必ず物理学者にご相談頂きたいのです。願いが叶った時に何が起こるかわかりませんから・・・。