歯が原因ではないのに歯が痛く感じるケースがあります。難しい言葉で言うと、「非歯原性歯痛」と言うそうです。
その中で比較的多いのが、副鼻腔炎(特に上顎洞炎)による痛み、そしてもう一つは神経痛です。
鼻の周囲(裏側)の頬骨の中に、副鼻腔と言う鼻とつながった空洞がいくつかあります。その中の目の下、鼻の横あたりにある空洞を上顎洞と言います。(maxillary sinus)
上顎洞は上の奥歯の根に隣接しています。なんらかの理由で上顎洞が炎症を起こすと痛みや腫れが出ます。(虫歯が原因で上顎洞炎を起こすことも1~2割あると言われます)
時折、ものを噛むときに歯が痛む(咬合痛)症状を伴うことがあります。上顎洞の炎症が隣接している臼歯の歯根膜に拡がるからです。歯がズキズキ痛むように感じることもあります。
歯に以上がない場合、上顎洞炎の痛みであって、歯が原因ではないですから、症状を軽減するために抗生物質を処方しますが、 耳鼻咽喉科へ行って頂く事になります。
もうひとつの神経痛は診断が難しいです。耳の付け根あたりの大きな神経節(三叉神経、そこから3本に神経が枝分かれして顔に拡がって行きます)になんらかの問題が出ると、強い痛みが出ます。目の下であったり、奥歯であったり、あたかも歯に激痛があるように感じる方が多いようです。
歯や、顎関節などに異常が見られないとき、神経痛の疑いがあるときは、脳神経外科、或はペインクリニックを受診されることをお勧めしています。薬物療法になることが多いようです。
ただ、痛みを感じる部分の歯に明らかな問題が見えない場合でも、当該の歯に金属のかぶせもの(クラウン)や、大きな詰め物がしてあると、レントゲンでもその中は見えませんから、診断が難しくなります。
時折、原因と思われる歯に着けてある古い冠(クラウン)を外してみると、中の歯が虫歯でボロボロになっている事があります。
歯の痛みには、原因によって特有の痛みの種類がありますから、ある程度の正確な診断は可能です。それらに当てはまらない症状の時には、非歯原性歯痛を候補に挙げることになります。
上顎洞炎からの痛みは治療(投薬、洗浄、手術等)で治まります。(残念ながら上顎洞炎自体は慢性化することも多いようです)神経痛の場合は難しいことが多いかもしれません。
この様に、歯が痛い!と思っても、いろいろなケースが考えられます。すべて虫歯のせいだと思っていらっしゃる方もいますが、そうではないんですね。でも、何かあったら早めにご相談頂きたいと思います。わたしたちの手に負えないこともあるのですが、少しでもお役に立てれば、と願っています。
2014年9月27日 カテゴリ:歯の話