虫歯の治療をしたあとに、物を噛むと痛む時の話です。
つい最近、虫歯を治療したばかりなのだが、噛むと痛くて食べられない。と言っていらっしゃる患者さんがいます。
様々な原因がありますが、単純に詰め物(あるいは被せもの)の噛み合わせが高すぎて、歯根膜に軽い炎症が起きていることが原因である事も、よくあります。
噛み合わせの調整はなかなか微妙なところがありまして、毎回完璧に調整することは難しく、実際に少し使って頂いてから再調整することもあります。
咬合紙と言う噛むと噛んだ点に色が付く紙を使って、強く当たっているところを見つけて調整していきます。噛まなくなっても(当たりが弱すぎては)困りますので、噛んでいるけれど、他の歯と同時に当たるポイントまで上手く調整したいのです。
まだまだ強く当たっている印が付いていても、患者さんに聞くと「これでよさそうだよ」と返事が来ることも度々あります。それを信じて調整を終わらせると、あとで痛くなることがよくあります。
そういうときは、印を信じてもう少し調整します。そうすると、「あ!こっちの方が全然違和感ないや!」と患者さんは驚きます。
歯の感覚はとても敏感で、例えば紙一枚の厚みでも感じることが出来ます。また、顎の筋肉はとても強い力があり、紙一枚の厚みでも、先に当たるとその歯に力がかかりすぎてしまします。
本来28本の歯で噛む力を分散させる力を、1本の歯で受け止めてしまいます。それにより痛みを引き起こします。
それを無理に慣らそうとしてはいけないのです。長い間力がかかり過ぎた為に、歯の神経にダメージを受け、歯髄炎を起こすこともあります。歯が欠けたり、割れたりすることさえ起りえます。歯を支える歯槽骨が吸収されて、歯をダメにしてしまうこともあります。
ちょっとしたことが、大きな影響を及ぼし、悪い結果を生むことがあるのですね。早めに調整すれば簡単に痛みもとれ、予後も問題ありません。
治療後に噛むと痛くなるケースが他にもあります。よくあるのは根管治療の後の痛みです。この痛みに関しては「根管治療の後に歯が痛む話」として書いてあります。「歯でお悩みの方」のボタンをクリックしてご参照下さい。
まれにですが、とっても深い虫歯の治療をした後に、歯髄が刺激されたために暫く噛むと痛む症状が残ることがあります。これはちょっと厄介な事があります。歯髄すれすれに詰め物が入るために歯髄が咬合圧を感じて痛むと思われます。或は軽い歯髄炎を起こしていることも考えられます。
詰め物を外して消炎作用のある材料で仮封して良化するのを待ってから再度詰め直すこともありますが、それだけ歯髄ギリギリまで詰めてある詰め物を除去する時に歯髄を傷つけるリスクもあり、悩まされるケースです。