先々週某日浅草ハブへ行って来ました。ヴォーカルの寝占友梨絵さんがハチャトリアン楽団と共演すると聞いていました。
初めてハブに行ったのは、オノマトペと言うグループに後藤沙紀さんというピアニストが所属していて、寝占さんが共演すると聞いて行ってみたのが始まりでした。かなり前に中野セロニアスに出口優日さんが出た時に聴いた後藤さんのピアノが素晴らしかったので機会があれば聴いてみたいと思っていましたから、丁度いいチャンスでした。
その時のオノマトペの演奏がなかなか良かったのと、浅草Hubの雰囲気が気に行って何度かお邪魔しています。
そのオノマトペは昨年の浅草ジャズでバンドのグランプリとソリスト両方の賞をとったバンドなんだそうですが、リーダーの新谷健介さん(ソリスト賞をとった方)のクラリネットとバンジョーの丸山朝光さんのプレーが光っていました。
さて今回のハチャトリアン楽団はその丸山朝光がリーダーで新谷さんが所属している、というややこしい関係ですが、この二人がフロントなら面白いだろうな、寝占さんも出るし・・・、と期待して行きました。
いつもながらお客さんでいっぱいです。どんどん席が埋まって行く中で演奏も盛り上がって行きました。
このバンドの方がオノマトペよりもトラッド色が強いようです。ニューオリンズジャズの事には詳しくない私です。知らない曲ばかりでしたが、なかなかいい感じです。
ソロもだんだん盛り上がって行きます。私が普段よく聴いているジャズよりも、ソロがずっと短くってシンプルでいいですね。周りのサポートの中ワンフレーズかそこらでソロを替って行く、そんな感じです。モダンジャズに慣れていると(メインの楽器は2コーラス、時々それ以上ソロをとりますね)簡単に終わりすぎると感じる方もいるかもしれないけど、私にはいい感じに聴こえました。
時々ありますが、「いったいいつまでソロを続けるんだろう・・・?」と思ってしまうほど長いソロをとるような演奏はあまり好きではない私です。彼らは短いソロですがいいアドリブで決めてくれます。新谷さん、丸山さんの白熱のソロには私もついつい声を上げてしましました。
以前、サックス奏者のブランフォード・マルサリスがスティングのバックバンドのメンバーとしてツァーに参加していた事がありました。他にもトランペットのクリス・ボッティー等有名なジャズメンが参加していましたね。スティングはロックで有名になる前、ジャズのベーシストでしたから、こういうプレーヤーを好んで使ったのかも知れません。
さて、マルサリスですが、スティングとのツァーを終えた後、「普段長いソロをプレーすることが多かった私にはとてもいい経験になった。与えられたソロの時間は短く、その短い時間で自分を表現しなければいけない。とても大切なことだ・・・・」というような彼のコメントを聞いたことがあります。
私のような素人には長すぎるソロは時として退屈になってしまうことがあります。早く終わってくれないかなぁ・・・・、と拍手で催促することさえありました。音楽の素養のしっかりした方々には聴きごたえのある素晴らしい演奏なのかもしれないけど・・・。
フロントに並ぶトランペットの石村奈穂さん、後ろに控えるチューバの菱沼さん、ドラムの三輪さんもいい味を出していましたね。チューバって重々しい音が微妙にいい楽器ですね、クラッシックはほとんど聴かないし、知らないのであまり聞いた事のない楽器ですが、ニューオリンズジャズ系ではこの音がとてもよくなじみます。重要な楽器なんでしょうか?面白いですねぇ。
次から次へとそれぞれの楽器の音が重なりながら繋がって行く、みんなが音でサポートして曲が空間を埋めて行くような、そして楽しい演奏に笑顔が広がって行くようでした。あまり聴いたこともなく知識もありませんでしたが、こういう音楽もいいもんじゃないですか・・・。
さて寝占さん登場、いつ聴いても「凄い!」としか言いようがありません。日本はおろか世界中にこれだけのスキャット出来る人そうはいないんじゃないんだろうか?とさえ思ってしまいます。ま、世の中広いですから上には上がたくさんいるんでしょうけど・・・。
寝占さんに聞いてこの店に来るようになりましたが、私の大好きなもう一人のヴォーカリスト出口優日さんもここにレギュラー出演しています。彼女はスィングジャズバンドのコーラスガールとして歌っていますが、これもなかなかいい味です。
彼女に聞いたら、丸山さんたちとは仲がいいんだそうで、一緒にやることもあるんだとか。出口さんとも「新谷さんと丸山さんは素晴らしいねぇ・・・」と話したりしましたが、いやぁ・・・。ホント凄いアドリブをします。新谷さんリーダーのオノマトペはニューオリンズジャズに拘らない演奏スタイルでもやりますが、これもまた素晴らしいものがあります。
クラリネットと言う楽器はサックスに比べるとモダンジャズではマイナーな楽器になってしまっているように感じてしまいますが、トラッドジャズではとても主要な楽器のようですね。ソプラノサックスと音域が近いのでしょうが、指使い等は全く違うそうです。いい音色の楽器です。もっと使ってくれたらいいのに・・・、とか思ってしまいました。
バンジョーも私にはブルーグラスやカントリーウエスタンのイメージがありましたが、そうか・・・、トラッドジャズには欠かせない楽器なんでしょう。味のあるバッキング、またコードの速弾きは迫力満点です。
なかなかメジャーな舞台に立つのはいろんな壁を乗り越えなければ難しい事なのだろうけど、こういう音楽家たちにももっと道が開けて行ってくれるといいですね。
トランペットの石村奈穂さんは最近椎名豊さんと時々共演しているようですが、1月の小岩コチのスケジュールに入っていました。行って間近で聴いてみようと思います。日本を代表するピアニストの一人である椎名さんとどんな演奏をするのか楽しみです。