もう20年以上前でしょうか?家にいてテレビをつけたら映画をやっていました。ボーっとして観ていましたが、なんだか面白くなり最後まで観てしまいました。「フォーウエディング」という映画でした。
原題は「Four Weddings and a Funeral」です。ヒュー・グラントの名前を始めて知りました。
共演のアンディ・マクダウェルがとっても素敵でした
映画のストーリーは勿論面白かったですが、音楽がまたよかった。その中で私の心に残った歌が「But not for me」でした。映画の中で主役のグラントが一度マクダウエルに振られてしまう・・・と言うか、そういうシーンで流れてくるこの歌の歌詞がストーリーにピッタリはまります。
そしてその歌に、「なんていい歌なんだろう?」と思わされました。メロディーも綺麗だし、歌詞がいい具合に韻をふんでお洒落な感じのこの歌、カッコいい伴奏に素晴らしい声の持ち主が歌っていました。
映画の終わりにクレジットが流れます。それを一生懸命見ていました。なんと歌っていたのはエルトン・ジョン、なんか聞き覚えのある声だとは思っていましたが・・・。驚きました。
いまでこそ、ロックやポップスのスターたちがジャズのスタンダードを歌うことが多くなりましたが、このころからですかねぇ?とにかく、CDショップへ行き、エルトンのアルバムを片っ端からチェックしましたが、この歌の入ったアルバムは見つかりませんでした。
どうやらこの映画の為に歌ったようです。早速サントラを買いましたよ。
元々私は歌がそこそこ好きでして、みなさんと同じようによくカラオケでいろんな歌を歌ったものでした。このころはよくそういう機会があったんですね。いい歌を聴くと歌って見たくなります。それでそのサントラを聴いてこの歌のメロディーなどを覚えました。
ただ当時はまだカラオケにはジャズのスタンダード曲は限られたものしか入っていなかったんですね。この歌を歌う事は暫くは出来ませんでした。
CDを何度も聴いているうちに、ジャズシンガーと言われる人達はどんな感じに「But not for me」を歌っているんだろう?と興味が湧いてきました。
その前から仕事帰りによく銀座の山野楽器やHMV(今は無くなってしまいましたね。)に寄ってCDを眺めていました。ジャズボーカルの棚を覗き、この歌が入っているCDを探しました。
フランク・シナトラの名前は私でも知っていましたからそれを一枚、そしてカーメン・マックレイと言う女性歌手のを一枚買いました。マックレイなんて知りませんでしたが、その名前でいっぱいCDが並んでいたので、きっと有名な人なんだろう!と勝手に考えて買ったこのCDは「グレートアメリカンソングブック」というタイトルの二枚組のライブ盤でした。
これがまた素晴らしいアルバムでありました。おぉ~!カッコいいなぁ・・。それに他の歌を聴いて、「いやぁ~、いい歌がいっぱいあるもんだなぁ・・・。」と感嘆しました。バックの演奏もすっごくカッコいい。しかも場所はロス近郊のライトハウスと言う店でした。車で走っていて見た事あるじゃん!確か南の海岸沿いにあったよ!へぇ~~~!と、また驚きです。
ライブ盤ですから、バックのミュージシャンを紹介している音も入っていました。ギターはジョー・パス、ピアノはトミー・フラナガンと言う名前でした。
全く知識のない私でしたから(今でもたいしてありませんが(笑))、まぁ歌のバックだからそんなに有名な人じゃないかも、と思いながらまた山野楽器でチェックしてみましたら、結構沢山のアルバムがあります。二人ともいやいや有名な方々だったんですね。
そんな感じでまた他の歌も多々気に入りまして、またそれを他の人はどう歌っているんだろう?と違う歌手のアルバムを買って見たり、またインストではどうなんだろう?とか、どんどん興味が拡がって行きました。
やっぱり自分で歌ってみたくなり、ピアノで伴奏して客に歌わせてくれるピアノバーを探したり、また実際にライブで演奏しているところを聴いてみたくなって来ました。そうしてライブハウスで聴いて見ると、その迫力とアドリブの効いた、2度とおなじ演奏がない不思議な音楽に魅了されました。
そんなこんなで、いつの間にかジャズのライブに嵌ってしまった、と言う訳です。たまたまこのころにロックのCDを見ていて、ロックバンドの「シカゴ」のアルバムで「Night and Day」と言うタイトルのものが目に入りました。それを聴いてみたら最高だった・・・。シカゴがジャズのスタンダードソングをやったアルバムです。
日本では廃盤と聞きましたが・・・
「Chicago」とか「Dream a little Dream of Me」とか、またいい歌を知りました。「Moonlight Serenade」をカッコよくアレンジして歌っていました。これはカラオケに入ってたから何度も歌ったなぁ・・・。やっぱりこういう人たちがこれだけ世界中で売れた(ロックでもポップスでも)のは理由がありますね。演奏も歌も本当に上手い!
またスティングが「Leaving Las Vegas」という映画の中で「Angel Eyes」とか何曲かジャズスタンダードを歌っていたのがすごくかっこよかった。たまたまそんなことが同時期に重なった不思議な時間でした。
単なるカラオケ好きの音楽ファンが、いい歌を発見して自分で歌ってみたいと思っているうちにいつの間にかジャズを好きになっていました。ジャズを聴こうと思ってジャズファンになった訳ではなかった私です。
今でもジャズ以外の音楽も大好きです。でも実際に聴くのは圧倒的にジャズがらみの音楽が多くなりました。私の患者さんのアメリカ人の方が「ジャズはアメリカ人のたった一つの発明なんだよ」と言っていました。よく聞くフレーズですが、たった一つとは言わないけれど、なんと素晴らしい発明ではありませんか?
私は今62歳ですが、私たちの年代(または先輩方)の方でジャズ愛好家の方たちは、若い頃にジャズ喫茶でジャズを聴いていた方が多いようです。私の友人でも「学生時代はよく行ったよ。」と話す者がいます。でも私はそのころ日本にいませんでしたから、そういう機会はありませんでした。(その頃はジャズに興味もありませんでしたけど・・・)
日本で大学に行かなかった私は(そう、恥ずかしい話ですが私は受験に失敗して泣く泣く都落ちして渡米したのです。)麻雀も出来ないし、パチンコもやりませんでした。(アメリカになかったから(笑))日本のジャズ喫茶も知らずに成長しました。
ですから、ジャズ喫茶でレコードを聴いていた日本のジャズ愛好家の方たちと、この音楽への入り方が違ったと言う事もあり、少し音楽に対する感覚が違うかな?と感じることもあります。
ジャズ喫茶でよく流れていたであろう「名盤」を私は知りません。だから名曲だったり、名演だったり、いまだに知らない事ばかり。でも私が大好きな歌が意外に皆さんには知られてなかったりすることもあります。
「リクエストありますか?」とボーカリストが言うのでリクエストしても却下されることがよくあります。いろんな有名な歌手がみな歌っている歌なのに日本では知名度が低いこともあります。ジャズ喫茶ではかからなかったんでしょうか?
聴き方にしても、ジャズ喫茶ではみな目をつぶって静かに音を聴く習慣だったそうです。店によってはお喋りしようものなら追い出されることもあったとか。一部の店ではジャズを学ぶ修行の場であるかのような雰囲気があったと聞きます。(私は行ったことないのでホントかどうか知りませんが)
成程、だから日本のライブハウスでは目をつぶって聴いている人が多いんだな、と言う事にあるとき気が付きました。私はそうやって音楽を聴いたことがなかったので、ジャズのライブを聴き始めた頃ある人になぜ目をつぶるのか聞いたことがあります。
「こうして聴いてると、音がよ~く聴こえるんだよ。」、「へぇ~、そうなんですか?」、私も真似してやってみました(笑)。すると、確かに音が鮮明に聴こえるような気がしました。人間はある感覚を遮断すると、他の感覚が鋭くなるようになっているのかも知れませんね。うん、結構いいかも・・・。CDを聴いているときに目を閉じると、ライブの情景が頭に浮かんでさえ来ます。
そういう聴き方も音楽を楽しむ素晴らしい方法の一つなのだと思います。ただ、怖~い顔をして聴いている方も時折いますね。これだけはいまだに私には意味不明です。そんなにつまらないのかなぁ・・・???
私は、と言いますと、But not for Me(笑)、やはりせっかく生で聴いているんだから目は閉じたくありません。ミュージシャンたちが楽しそうに、時には同僚のいいフレーズに笑顔で応えたりしながら演奏するのを見ていると音楽の空間が拡がって行くように感じます。歌手やミュージシャンたちの表情も聴こえてくる音を彩っているように感じます。
私にとってライブの音楽は、(ちょっと極端な言い方をすれば)ミュージカルやオペラのように「観て、聴いて」楽しむのが好きです。やっぱりジャズはライブだよ!
若い頃は結構遠慮して聴いていましたが、私もいつの間に60を越え、老人の部類に入りました。他のお客さんたちにまだ若干の遠慮、気遣いは致しますが。割と弾けて楽しませて頂いているこの頃でございます。(謝)
さて初めに書いた「フォーウエディング」ですが、この映画がアメリカで意外なヒット作となり(ゴールデングローブ賞とか取ったらしいですね)ヒュー・グラントの出世作になったそうですよ。いい映画だったなぁ。
2016年9月22日 カテゴリ:音楽の話