月曜日、前から気にはなっていて、どうしようかなぁ・・・、とずっと思っていたのですが、やっぱり行って来ました。仕事終わって電話すると、「ご相席なら・・・」との事。でも行ってみましたらカウンターの隅っこに入れて貰えました。キャンセルがあったのかな?相席だとテーブルに背を向けて座るので、ドリンクを取りづらいのです。カウンターで助かりました。
カウンターの隅にあるレトロなタイプライター。私はこのオブジェが好きで、実は時々イタズラしています。(絶対ナイショの話ですが(笑))
何人も立ち見の人がいるなぁ、と思ったら殆どがミュージシャンでした。アメリカで交友があった人もいるだろうし、そうでない人も興味があるんでしょうね。若いミュージシャンが大勢来ていました。混み合っているときはミュージシャンの方々は立ち見です。
オーエンズくんは聞くところによるとアメリカで人気ナンバーワンの若手ドラマーだそうです。なんと、カート・エリングやクリスチャン・マクブライドのアルバムに参加したそのCDたちはグラミー賞をとったそうです。Ulyssesと言うファーストネームは日本語流に言うと「ユリシーズ」、ギリシャ神話に出てくる名前ですね、(神様だったか英雄だったか忘れましたが(笑))英語ではユリシスと発音するみたいです。
ピアノの大林くんは今年アメリカで新人の登竜門と目されるようなコンテストで優勝してニューヨークで活躍中のピアニストだとか・・・。アメリカで活動しているミュージシャンは多いみたいですが、なかなかいい箱で演奏できる人は少ないみたい。彼は頑張っているようです。
その二人にベースの中村恭司くん(彼はニューヨークでひっぱりだこの人気ベーシストだそうです。)、それにトランペット、アルトサックスを加えて「New Century Jazz Quintet」と言うユニットを作り好評を得ている・・・、等々聞いていましたから、私も「さて行こうかどうしようか・・」と思っていました。
オーエンズさんの動画をチェックしてみたら、たまたまちょっと変わったドラミングをしていた(ドラムの横や足を叩いたり・・・)動画だったもんで、いつもこんな感じなのかなぁ・・、とちょっと心配で(そういうのは私にはちょっと辛い)、行こうか迷っていたのです。それと彼らのアルバムがオリジナル中心だったことも私を悩ませる原因でした。
さて一曲目が始まりました。MC無しで始めたのは「Love is Here to Stay」ちょっと驚きましたが、「これなら聴きやすいわい」と安堵しました(笑)。演奏も変わったことはせず、美しい歌を美しい若々しい音色で奏でて行きます。ユリシス君のドラムや栗谷くんのベースがいいところでアクセントをつけますが、決してバランスを崩すようなものではありません。
一曲目を終えて、ユリシス君と大林君が少し話しました。そう、この夜は管なしのピアノトリオ、そしてレギュラーベーシストの中村さんは忙し過ぎて来れず、かわりに栗谷巧さんというベーシストが入っていました。レギュラーメンバーの少ないこの日はスタンダード中心に演奏するとの事でした。
「いやぁ、助かったわ・・・、」私にはその方が助かります。ギリギリまで悩みましたが、来てよかったかな(笑)。栗谷さんと言う名前も知りませんでしたが、正確でいい音を出す人だな、と言う印象です。北海道で活動しているらしいですが、中村さんが推薦したそうですからきっと名の知られた人なのでしょう。
話はそれますが、大林くんは英語上手いですねぇ。彼のMCでお客さんが盛り上がったときに、ユリシスくんが「どうしたんだ?」と気になったようで、大林くんが英語で「今こういう事話したんだよ・・・。」とユリシス君に教えていたのですが、発音等々抜群でした。
ジャズのミュージシャンはアメリカに留学経験があったり、アメリカで暫く活動していた方が多く、英語を使いこなす人が多いようですが、何年もアメリカにいても上手くならない人も時々います。実は私もその一人。
10年も住んでいたのに英語は下手くそです。結構日本人が多かったので、ついつい日本人とつるんでしまい、あまり英語を使おうと努力しませんでした。だから自分は下手なんですが、人の話すところを聞いて、上手い下手はよくわかります。彼のように英語上手な人は羨ましいですね。ニューヨークにもバークレーにも日本人が大勢いるそうですから、私のような人も少なからずいるだろうな、と思います。
さて演奏は続いて行きます。満員のナルはどんどん盛り上がって行きます。私もうるさいですが、後ろからあちらこちらから声援が上がり始めました。一曲ユリシスさんのオリジナルを挟んで「No Greater Love」、「Body & Soul」と続けて行きました。いい歌ばっかりだなぁ・・・。大好きです。
ちょっとネットで見たのですが、トランぺッターのメンバーが歌が上手いそうなもんで、ゆくゆくはボーカルも入れたアルバムを作ることも視野に入れているんだそうです。私はそういうの大好きです。ユリシスさんはカート・エリングやニーナ・フリーロンのツァーに参加したりしているだけあって歌も好きなんでしょうね。歌心のあるインストが大好きです。
ど素人の私ですからホントにわかっているわけではありませんが、ユリシスさんのドラムは、「うん、ちょっと違うな・・・。」と感じました。クラッシック音楽ではいろんな打楽器が使われます。作曲者がここぞと言う場面に効果的にそれらの打楽器を入れます。指揮者によっては、その使い方も微妙に変えたりするのでしょう。
私の超個人的な理解ですが、ジャズではドラマーひとりでそれらの打楽器の役目をします。それも、細かい楽譜などジャズにはありませんから、他のプレーヤー同様に(勿論いろんな決まり事はあるのでしょうが)そのときどきの周りとの音の流れ、空気を感じながら様々な音を出して音楽を創って行く・・・、そんな風に考えています。(私からすれば、彼らジャズミュージシャンのそういう演奏は「神業」としか思えませんが・・・。)
聴きながら、「ここでビシッと来い!」とか思いながら聴くこともあります。ユリシスさんのドラムは、まず音が美しいこと、そして、私の意表をつくタイミングで叩いたり、おぉ!ここでそう来るかぁ!と思わせる事がしばしば、それが心地よい、しかも決して邪魔しないと言うか、独りよがりにはなり得ないような人格が感じられました。
大林さんのピアノも最高でした。やはり音色がとても綺麗。きっと技術的にも(私にはよくわかりませんが)申し分ないものがあるのでしょう。強弱の付け方が綺麗です。弱い音が切なくなるほど綺麗です。
「Body & Soul」では大林くん、2コーラス終えてとても気持ちよく弾いています。だれもがもっと聴きたく思ったでしょう。そして3コーラス目も続け、結局最後まで弾き切りました。これだけ美しく弾いているのにソロをまわす必要ありませんよね。いやぁ、よかった・・・。素晴らしい演奏に大拍手でした。
相変わらず1セットで帰る私です。階段を上がって上に出ると、大林君と(多分ドラムの柴田亮君だと思いますが)日本人ミュージシャンが話していました。柴田くんが「いやぁ、あいつやっぱすげぇや・・・。」と話しているのが聞こえました。
大林君に手を出すと流石アメリカ在住、しっかりと強く握ってくれて、頭を下げて「どうも有難うございました!」と言ってくれました。いい音楽とこの丁寧な挨拶にとても気を良くして帰る客がそこにいました(笑)。また機会があれば聴きたいトリオです。そして世界に羽ばたいて行ってくれることを願っています。