ある夜、あるジャズバーで、ある女性ヴォーカリストの歌を聴いていました。
何曲目かに「イパネマの娘」を歌いました。女性ヴォーカルでは「Boy from Ipanema」と、girl をboyと変えて歌うヴォーカリストがいますが、彼女は原曲通りにgirlで歌いました。
なんでもアメリカにいた時に(彼女は数年アメリカに行っていたそうです)ジャムセッションで「Boy from Ipanema」と歌ったら、アメリカ人のヴォーカリストに「そう変えると、ちょっとチープだよね。」、と言われたそうです。
そのヴォーカリストはかのセルジオ・メンデスのバックコーラスをしていたような人だったらしいのですが、そう言われて、「そうなんだ・・・」と思ったんでしょうね。それからはBoy と変えずに「Girl from Ipanema」を歌うことが多くなった・・・、と話してくれました。
うぅ~~ん・・・?どうなんでしょう?プロの歌手がそう言えば、聞いてるお客さんたちは「そうか!」と納得してそう思うかもしれません。それもまずいだろう・・・、私はちょっと反論しました。だって有名なアメリカ人女性歌手が「Boy ・・・」と歌ってるのを聴いたことがあります。
エラ・フィッツジェラルドやダイアナ・クラールや有名な女性歌手で「Boy from Ipanema」と歌詞を変えて歌ってる有名歌手はいっぱいいるじゃぁないですか?
エラがそう歌っていたんだから、エラはその歌詞を(girl をboyに変えた歌詞)cheap とは思っていなかったんじゃないでしょうか?
私はネイティブからは程遠いですが、多少英語はわかります。10年アメリカに住んでいましたからね。私が聴いてもさほどおかしくは聴こえないのだけれど・・・。
オリジナルはポルトガル語で作られたものだから、英語に訳した時点で少しチープになっているのかも知れません。でも英語としては、boyだろうがgirl だろうがそんなに違和感ないように思えるのだけど・・・。
その「cheap だよね・・・」と言った方の個人的意見は尊重するけれど、あくまで個人的意見であって、音楽関係者、詩人の総意とはとってはいけないと思います。
英語が苦手な私たちは一人のアメリカ人(あるいは外国人)が言った言葉をよく吟味しないと、間違ったことを、思い込みで真実と勘違いしてしまうことがあるかも知れませんよ。気を付けないといけないと思います。
変に外国人に劣等感を抱いているのかも知れませんね。私は正直言ってそのように育ちましたから、劣等感が抜けないところがあります。戦後の日本人はそういう劣等感を植え付けられるような育ち方をしてきたと感じています。
一度植え付けられた劣等感なり、優越感を拭い去ることは不可能に近いくらい難しい事だと私は思っています。ただ、自分がそういう感情を植え付けられてしまった事を理解することが大事です。無理やり否定して偏見がないと思い込むよりも、自分が偏見を持っていることを肯定して、それが間違った考えであることも理解して、そしてその上で正しい判断を導くことは十分可能だと思っているのです。
音楽の話から少しそれてしまったかも知れないね(笑)。でも赤ちゃんの時にはなんの偏見もない純粋な存在だった人間は、育っていくにつれて多くの(無知からくる)偏見を持つようになることは間違いのない事で、それを正しく理解して、どうやってそれを制御していくか、ということはとても大切なことだと思っています。
ジャズに関わらず、音楽の聴き方も、もしかしたら日本でこう聴くべきだ、と思われている事は日本人のおおいなる偏見なのかもしれないかも・・・?。