久しぶりに淡路町のリディアンさんにお邪魔しました。
もう何年前になるでしょうか、まだ銀座松坂屋の裏にスィングシティーがあったころ、知らない名前のボーカリストが出るので、どんなもんか?と聴きに行きました。
テーブルのミックスナッツに目を落としていた私、第一声で思わず顔をあげて聴き入ってしまった私です。強烈なインパクトのある歌声でした。ハリがあってよ~く伸びる、量感のある素晴らしい歌声で、気持ちよく、情感込めて歌う彼女の歌に一目ぼれでした。
その後、大塚のグレコに時々出演しているのを見つけて何度か聴きに行きました。初めて銀座で聴いたときにはジャズのスタンダードも少しは歌っていたのですが、そのあとはボサノバ、ブラジル音楽オンリーになっていったように記憶しています。小岩コチでも一度聴きましたが、暫く私の行動範囲に出てくれなかったので、リディアンのスケジュールに彼女の名前を見て、これは行ってみよう!と思ったわけです。
ピアノは楠直孝さん。
楠さんは前に麹町Pacoで聴いたなぁ・・・、あの日も私はついつい声を出してしまいましたが、この夜の彼のピアノにはちょっと大騒ぎしてしまいました。
エレキベースにはトオイダイスケさんでした。
トオイダイスケさんってピアニストだと思ってたら、本業はベーシストだったんですね。私の素人なりの感想ですが、正確なピッチ、リズムにいいフレーズを入れてくれた感じがしました。本当はよくわかってないんですけど(笑)・・・。
一曲インストをやってから上田さん登場。やっぱりブラジル音楽なのかなぁ?と思いきや、ジャズのスタンダードを2曲歌ってくれました。やっぱり良く声が出るなぁ。圧倒的な量感のある素晴らしい歌声にはや背筋がゾクゾクしてきました。楠さんも嬉しそうな顔でいいバッキングをしてくれます。
敢えて言えば、ほんのちょっぴり英語の発音に難があるところがありますが(ポルトガル語に関しては全く私には解りませんが)、そんなこと気にならなくさせるような厚みのある歌声に私はついつい声を出していました。
2曲終えてから、「ちょっと予定変えようか?」と楽譜を入れ替えて・・・、今度はブラジル音楽です。「こっちのが安心だぁ・・・(笑)」などと言って歌い始めましたが、確かに自信満々の感が伺えました。
上田さんが乗ってくると、後ろの二人もノリノリになります。ソロで楠さんがいいフレーズを連発、上田さんが嬉しそうに笑顔で「イェーイ!」と声をかけて囃します。こうなるとお客さんもノッテ来て・・・、と言いたいところだけど、残念ながらまばらな客席の方々は皆さん下を向いて目をつぶり、じっと(ときおり身体を揺らしている方もいらっしゃいました)聴き入っていました。ジャズ喫茶によく行かれていた方々なのかなぁ・・・?
他のお客さんには申し訳ないとは思いつつ、素晴らしい演奏についつい声を出す私でした・・・。知らない歌もありましたが、よーく知っている「コルコバード」とか「ワンノートサンバ」とかもやってくれました。
彼女の中では、まだジャズはちょっと苦手・・・?みたいに思っているのかも知れないけど、ジャズミュージシャンたちはジョビンやジルベルトの楽曲をよくやります。もはやジャズのスタンダードと言ってもいいくらいだと思うのです。そして彼女の歌は素晴らしいジャズになっているんだけど、彼女自身それに気づいていないように見えます。
この素晴らしい声で、きっと彼女はその時の思いのままに歌っています。多分同じ歌い方は二度と出来ないんじゃないかなぁ?二度と同じ演奏を聴くことはないというのは、まさにジャズだと思います。そしてそれは私の背中を何度も痺れさせてくれました。
いいライブの遭遇すると、ついつい声を出すせいか、ときどき他のお客さんに(静かに聴きたい方々も多いのでしょうね)睨まれたりする私ですが、幸い1セット目にはそういう事はありませんでした。今のうちに退散・・・、といつも通りに1セット終わって席を立ちます。上田さんがやって来て、「ノリノリでしたね。」と笑顔で話しかけてくれました。
「そりゃぁ、素晴らしい演奏だったからネ」という言葉が自然に出て来ました。いやぁ、いいライブだったなぁ。是非また近くに来てほしいものです。(^^)v