日本の歯科では、保険適応の診療と、適応外の自費診療があります。このことについて詳しく説明しようとすると、かなり長い話をしなければならなくなります。なるべく簡単にわかりやすくお話出来れば幸いですが・・・。
日本の保険診療では、治療法、使用する歯科材料などを国が決めて、細かく点数化されています。料金は日本全国一律です。それ以外の方法、素材を使う診療は保健適応外となり、自費診療として行われます。自費診療費は各医院の裁量で決められますから、一定ではありませんが、あまり大きな差はないようです。
日本の保険制度では、ある限られた予算の中で出来る限りの治療を患者さんが受けられるように苦心して設計されているのだと思いますが、予算の関係もあり、補綴(被せもの、義歯等)に関しては世界の主要国で主流となっている治療法からは少し離れざるを得ないところがあることは事実です。ある意味で「世界基準」ではないのです。
歯科の場合で言えば、最低限の機能回復は出来るように治療法、材料が決められていますが、残念ながら必ずしも最高の治療が出来るわけではありません。
ただ保健だからすぐダメになるわけではありません。十分に長持ちしますし、歯科医師も保険適応の治療でも少しでも良い治療をするべく努力しておりますから、決して大幅に質が悪いと言う事はありません。
日本の方々の多くは、保険治療は普通の治療、自費治療は(普通の治療より)贅沢な(?)治療、と言った概念をお持ちのようです。「普通の治療でお願いします。」と言われたら、保険適応の範囲内での治療の事だと認識します。実際は先進国での普通の治療は(特に補綴に関しては)日本では保険適応ではありません。
では、どんな違いがあるのでしょうか?日本の方々(多くの歯科医師も含めてですが、)は日本で受けている治療は世界中で行われている治療と同等か、むしろ良いと思っていらっしゃる方が多いようです。世界中で同じ治療法が行われている、とお考えの方がほとんどだと思われます。
(実は日本では歯医者でさえ、長い留学経験のある者以外ではこの事実を知らない歯科医師が多いようです。)
全てではありませんが、日本の保険治療と同じ治療をしている国は、(主に補綴に関しての事ですが)あそらく主要国の中には殆どありません。(イギリスでは近いものがあるようですが、むしろ自費診療歯科の方が多いと聞いています。)
ヨーロッパでは保険制度がある国も多いですが、治療法は世界で主流の治療法(日本の自費診療と同じ治療です。)で行います。国によって、保険の適応範囲が違い、それを超えた範囲は自費になる、という国もあり、殆ど保険で出来る国もあるようです。
どちらにしても、歯科医に与えられる診療報酬は日本の自費診療に近い金額(日本の平均以上の国も多いでしょう)になっています。それが、歯科医院を運営していく上で適正な金額だからです。
むしろ日本の自費診療費は海外の歯科医療費を参考に設定されている、と言った方がいいかもしれません。海外の歯科医療費と日本の保険診療の医療費の差については、このブログの「歯の話」の中で説明しています。また「歯でお悩みの方へ」と言うボタンからもその記事に行くことが出来ますので、ご参照ください。
新原歯科医院では保険診療を主に行っていますが、勿論自費診療にも対応しています。保険対応の治療でも良質の診療をするべく努めておりますが、世界で主流の治療法には及ばない部分もあります。
可能であれば自費診療を考えられることも良いかと思います。見栄えだけではなく、精密さ、フィット、フィット感、耐久力等、違いはあります。だからこそ世界で主流になっている治療なわけですね。
特に部分義歯に置いては、差は大きいですね。作り方も材料も全く違います。良い義歯は安定して噛みやすいだけでなく、残存歯を義歯によって固定し長持ちさせるようにデザインされています。顎堤(歯を失った後の歯ぐきです)の吸収も最低限に抑えます。
前歯の被せものも耐久力がかなり違います。保険適応の材質ではどうしても欠けやすく、また色も徐々に変色しやすい欠点があります。
ただ、自費診療は費用がかかります。保険診療費が安すぎるので余計に差を感じられます。医療というものはコストがかかるものなんですね。
幸い日本では保険診療でどなたでも機能回復出来るような制度が存在します。他の国では治療を受けたくても費用の関係で受けられない方が多く存在するのです。これは喜んで享受して頂きたいところです。
ひとつ、皆さんが知らない保険診療の利点があります。歯周病、或は他の理由で、もう長くは持たないことが分かっている歯があるとします。その歯に被せもの、差し歯のような治療が必要なとき、保険診療であればさして費用がかかりませんから、躊躇することなく治療できます。
さほど持たないことが分かっているのに多大な費用をかけることはありません。これはこういう保険制度があればこそ出来ることで、外国では難しいのです。
やはり少し長くなってしまいました・・・。当医院の自費診療の材料に関しては、「料金表」の中で簡単に説明していますので、ご参考にして下さい。ひとつ大事なことがあります。どんな材料、治療法を使ったにしても、「正しく」、「基本に忠実に」治療しなければ、その材料、治療法を生かせません。
殆どの歯医者は保険、自費、共に出来る限りの良い治療をお届けしようと頑張っています。治療を受けられるのは患者さんです。ご自身の(人間の)身体の一部でも、お金で買えるものはありません。またどんなに費用をかけても元の健康な歯に勝るものではありません。
ただ、治療が必要になった時、出来れば少しでも歯、身体にとって良いことをしてあげられれば最高であることは間違いないのではないでしょうか?ご自身の身体ですから、大事にしていただけたら、と祈っています。私たちはそのお手伝いをさせてもらうためにここにいるのだ、と思っています。
2015年1月27日 カテゴリ:歯の話