昨年でしたか、御茶ノ水駿河台下にあった書泉ブックマートが店を閉めました。書泉の幾つかの店舗の中では漫画やちょっとオタクっぽい本が置いてありました。
私の息子が小・中学時代に(高校入ってからもか・・・(笑))よく参考書を買いに行こう・・・、と言われ三省堂へ連れて行きました。しばし本棚を眺め、「今日はやっぱりいいや・・・」とか言って、彼の本命の書泉ブックマートへ行き漫画を買ったものでした。(笑)
私も漫画少年、漫画中年でしたから、息子が欲しいコミックを選んでいる間、私も自分の好きな棚を眺めて楽しんでいました。結構昔の漫画の復刻版など、他の書店では見られないものが多く置いてあったのです。
あるとき、「おおぅ~~~!こりゃあ懐かしいわい!」と手にとった平田弘史先生の「弓道士魂」、ついつい買ってしまったなぁ。三十三間堂で行われていた通し矢の話です。私が高校生くらいの頃連載されていて大好きな漫画でした。
京都の三十三間堂と言えば、中学の修学旅行で行った記憶があります。軒に矢の傷跡があったのを見たような気がします。
三十三間堂の通し矢って、どの程度皆さんに知られているのかなぁ?有名なのか、はてさて・・・。
今年も成人式の記念行事として振り袖姿で弓を放った方々が多くいた事でしょう。
華やかですねぇ・・・。
通し矢についてネット検索すると画像はこんなのばっかり出て来ます。成人式の人気スポットなんでしょうか?
私にとって通し矢はこんなイメージでした。
武士の時代に大流行したと言われる「大矢数」です。京都蓮華院(三十三間堂)の西側軒下を南から北に矢を射とおします。一昼夜(丸一日射続けるんですね)かけて何本通したか、総数を競う過酷な戦いでした。
伝説では平安時代末期に始まったと言う話があるそうですが、記録が残っているのは安土桃山時代の頃からだそうです豊臣秀次が「ここで射術をしてはいけませんよ」と言う禁令を出した記録が残っているそうです。
ここを射通す訳です。長さ121.7メートル、高さ4.5~5.3メートル
江戸時代に入って1606年に清州藩の朝岡(浅岡と言う説も・・・)平兵衛という武士が100本射て見たところ、51本通った、と言うのが通し矢として明確な記録が残っている最初のものです。
その後、われもわれもと天下一の称号をかけて記録に挑むようになりました。三十三間堂は天下惣一を争う競技場となったのです。(新記録を達成すると藩が「天下惣一」の額をお堂に掲げるようになりました。)
徐々に記録は伸びて行き、1000本を超えて行きます。また、実施にはかなりの費用も必要となり、藩の援助なくては挑むことは敵わなくなります。
最終的には尾張藩と紀州藩の一騎打ちの様相を呈して来ました。そのことを描いたのが平田弘史先生の「弓道士魂」です。いやぁ、精緻な絵とドラマチックな展開は数十年ぶりにあらためて読んでも感動する思いでした。
知りませんでしたが、元々江戸時代から、講談の一目として楽しまれていたようです。かなり昔(太平洋戦争終戦直前の1945年に)長谷川一夫さん、田中絹代さん主演で映画化もされたそうです。
講談、昔からの言い伝え等を元にして映画、漫画が作られたんでしょうね。藩のメンツをかけた戦いになった通し矢の記録に挑むために、武士たちはどんな過酷な修行を積んだんでしょうね?
最終的には23歳の和佐大八郎(紀州)という若武者が8133本の大記録を立てたあとは記録が伸びず、徐々に挑戦するものがいなくなっていったと言う事です。(18歳と書かれている記事も多くありますが、恐らく18歳で初めて7000本越えを果たした葛西園左衛門と混同しているのではないか?と思われます)
一昼夜で総矢数13053本射たうちの8133本を射とおした訳ですが、単純に計算して1分間に9本射なければいけません。実際には肩を痛め、かなりの時間休んでから再開したという話があります。であれば1分間に10数本射続けた・・・、5秒に1本以上の早打ちです。
これがどれほどすごい事なのかは見当もつきません。使われた弓は推定25~28キロの強弓だと言われています。弓道については何も知らぬ私です。どれだけ強い弓なのかもわかりません。
ある大学弓道部のHPにあった通し矢に関する文章を見ると、「今ではそれだけの強弓を引ける者は稀である。」と書かれています。また「それを一昼夜、10000回以上射続ける、と言う事は並々ならぬ鍛錬を必要とするだろう。」とも記されていました。
何と比較出来るのか解らないけれど、例えば10キロの鉄アレイを何時間(何分間?)カールし続けられるだろう・・?高校生の頃には腕立て伏せも100回位やったことがありますが、最後は腕がブルブル震えて曲げた腕を伸ばせなくなりました。ほんの100回です。(今は10回くらいしか出来ない身体になりました(笑))
ちょっと話が長くなりそうですね、また、続編に続く・・・・、と言う事にしましょうか・・・。