新原歯科医院

院長ブログ

カテゴリ: 歯の話

親不知

親知らず、一番奥の歯(第2大臼歯)のまた奥に出来てくる(出来ないこともあります)歯です。

 

人間の顎の骨は元々第3大臼歯(親知らず)が完全に萌出するスペースがあるほど大きくない場合が多く、真っ直ぐ生えてきても他の歯のように完全に見えるようにならない(歯肉に隠れて)ことが多いです。

 

また真っ直ぐにはえてくることは少なく、横向き、或いは斜めに伸びて来たり、骨の中に埋まったままで(完全埋伏と言います)全く見えないことも多くあります。

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完全埋伏の場合より、半埋伏あるいは埋伏していない時にトラブルが多く発生します。

 

ただでさえ一番奥で歯ブラシが届かないのに加え、図のように手前の歯との隙間や奥の歯肉との隙間が深くなる傾向があります。

 

そこに常に歯垢がたくさんたまっていますから、虫歯にもなりやすく(手前の歯も虫歯になりやすくなりますね)、歯肉の炎症も起きやすくなります。

 

歯肉に傷がついたりしてそこにバイキンが入ると化膿して腫れて痛みます。「親不知のおかげで腫れた、」というのはこういう事です。

 

そこに親不知があることによってそういう腫れが出たり、虫歯が出来たりしますから、最終的にそれらの症状を防ぐ為には原因を取り除くこと、つまり親知らずを抜くことになります。

 

親知らずは真っ直ぐ出て来ることが少ないため役に立たないケースが殆どですが、手前の第2大臼歯はとても大事な歯です。

 

親知らずの影響でこの最後臼歯を悪くしないように気を付けなければなりません。抜くことを怖がったり、嫌がったために大切な永久歯を弱らせて、最悪それまで抜かざるを得なくなることもあります。

 

出来れば若いうちに処置することをお勧めします。歯を抜いたあとに骨が作られ埋まって行きますが、歳をとってからだと骨が十分に埋まらなくなることもあり、それによって手前の第2大臼歯を支える顎骨が不十分になり弱くなるケースがあります。

 

もしも(たまにはうまく萌出して機能するケースもありますが)親知らずが悪さをする可能性があるのなら、早めに決断することが重要になって来ます。

 

あまり深い埋伏歯の場合は私には無理なので、うちの患者さんたちには東京医科歯科大学の口腔外科、あるいは顎顔面外科に紹介状を書いています。

 

ちなみに私の親知らずは学生時代に先輩に全部抜いてもらいました。というか、先輩に頼まれて処置してもらいました。外科の単位を取るために最低20本の抜歯をこなさなければいけなかったので、ちょうどいい患者だったわけです。

 

 

 カテゴリ:歯の話

小児歯科の仕事について

歯科大を卒業するまでにひととおり専門医の仕事の基礎を習いました。小児科も基本的なことは学び、数人の子供の患者さんの治療もしました。

 

アメリカでは小児科も専門医としての訓練を受けて、試験に通って資格を得ます。歯科大卒業後にGraduate school へ入り専門的な知識とテクニックを身に付けます。

 

ですから私は本当に基礎の基礎しか知りませんが、知っている事を書いてみます。

 

まず、歯医者の待合室から一般歯科とは違うでしょう。お子さんたちが気持ちよく、楽しくなるような工夫をしている事でしょう。おもちゃ、人形、絵・・・、他にもきっといろんなものが置いてあったりするかもしれません。よく小児歯科の窓には楽しそうな絵がはってありますね。

 

私たちの時代には小児歯科医は白衣を着ませんでした。マスクもしません。子供が少しでも違和感を抱くことを避けるためです。元々白衣を着る一つの理由は自分の服を汚さないことですが、ここではそうも言っていられません。(一般歯科でも白衣を着ないドクターが多かったですよ)

 

ドクターは患者さん(お子さん)と話す時にしゃがんで目の高さを同じにします。大きな大人が上から見下ろして話すのは子供から見たら威圧感があるからです。

 

使う言葉にも気を付けます。使ってはいけない言葉が多々あります。「いたい」、「こわい」、「けずる」、「ちゅうしゃ」・・・いろいろリストがありました。その代替用語のリストもありました。(かなり忘れてしまいましたが)

 

怖そうな器具は極力見えないように心掛けます。逆に水や空気が出るシュリンジがユニットに付いていますが、水鉄砲のように遊ばせながら、こういうものを使うことけど、怖いものではないことが自然にわかるようにしたりします。

 

保護者は診療室に入れません。甘えるからです。親が助けてくれると思って泣いたりします。子供は割と打算的なところがあります。これも子供の純粋さのひとつかもしれません。

 

いろいろ楽しい話をしながら出来るだけ早く治療を終えます。乳歯は、永久歯に代わるまでの数年間痛まずに使えればよいので、大人の歯ほど丁寧に治療することもないのです。早く終わらせる、子供にとって楽に、という事が優先されます。

 

終わって帰りにはおみやげを貰います。小さなものでも貰えると嬉しいものです。こうしてお子さんたちが楽しい時間を過ごし、また遊びに来てね!と言ってさよならします。

 

何歳くらいの子にはどの程度の治療をするか、とか非協力児への対応の仕方とか、残念ながら、私はそこまではわかりません。専門的な訓練、学習はしていませんから。

 

子供のときの経験は一生つきまとうことがあります。歯医者ぎらいの人の大半は子供の時にいやな思いをしています。いい小児歯科で治療をうけられた方は比較的歯の治療に対する恐怖心が薄い方が多いですね。

 

私は子供が歯医者嫌いにならないように治療する自信は全くありません。そのためのトレーニングは受けていないからです。お土産もおいていないし、うちの待合室は子供にとっては殺風景なものでしかないかもしれません。私はシンプルでいいと思っておりますが・・・。

 

私が勉強したときから30年以上過ぎました。今はもっといろいろな工夫をしているかも知れませんね。日本の歯科大でどういう教育をしているのかは知りませんが、基本的には同じことをしているはずです。

 

若い親御さんたちには、子供たちのためにいい小児歯科を見つけてくれることを願ってやみません。そうして歯医者を好きな患者さんが増えてくれたらいいなぁ・・・。小児歯科の先生方、宜しくお願い致します!

 カテゴリ:アメリカの歯医者の話, 歯の話

日本とアメリカの歯科医療費

30年前に日本に帰って来たときに驚いたことがいくつかありました。その一つは医療費の差です。

 

大学でもかなりの人数を治療してきて、医療費はこんなもんだという理解をしていました。アメリカでは歯科大で学生が治療するときの治療費は、普通の歯科診療所の半額程度です。

 

学生が治療しますから遅いです。でもステップごとに指導医のチェックを受けますから治療の質はとても高いと言えます。ですから結構遠いところから(一時間以上かけても)いらっしゃる方も大勢いました。

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見づらいですが、これは数年前に歯科の専門誌で見つけた、日本、アメリカ、スェーデンの歯科医療費の比較です。私がいたころ(1973~1983)のアメリカではこの表の半額以下だったように記憶しています。

 

例えば、奥歯が虫歯で痛みが出たときですが、ほとんどの場合根管治療から始まります。日本では8700円、アメリカは15~20万円ですね。そのあと歯を保護するためにクラウンをかぶせなくてはいけませんが、これが日本では1万2千円強、アメリカは15~20万円です。

 

日本の保険治療では患者さんはその3割を負担します。つまり日本で6千円かかる治療費はアメリカで同等のことをすれば30万円以上かかると言うことですね。

 

クラウンに関しては、アメリカや先進諸国で使う主な材料(セラミック、金、ジルコニア等)は日本の保険ではカバーされませんから、そのような(外国では普通、標準の)治療は日本では自費診療として各医院で費用が違います。

 

私の医院では12万円前後です。根管治療は保険でカバーされますから、私たちはアメリカやスエーデンの歯医者さんたちの2割以下の報酬しかいただいていません。

 

みなさんは日本の医療費は高い、と思わされて来ていますが、他の先進国と比較して書かれた記事などを読まれたことは少ないのではないでしょうか?前記のように同じ治療の単価は日本は他の先進国よりはるかに低い水準に抑えられています。

 

ヨーロッパの保険制度については私は殆ど知識がありませんが、多くの国で何らかの社会保険制度があるように聞いています。

 

国によって制度も運用の仕方も違うのだろうと思います。ある国では定期検診を義務付け、それを守った場合のみ保険治療を受けられる制度があると聞いた記憶があります。

 

アメリカでは社会保険制度はありません。(低所得者向けの、いろいろ制約のある保険はあります)ですから痛みに苦しんでいる人でも治療を受けられない事がままあるのです。

 

これは社会問題にもなっていますから、以前から政府は新たな保険制度を立ち上げようと議会と交渉を続けています。でも医療とはお金がかかるものなんですね。難しいと思います。

 

日本では個々の治療に関して診療報酬が低く抑えられているおかげで殆どの人々が治療を受ける事が可能です。これはとても素晴らしいことですが、施設の維持、更新等には医療機関はとても苦労します。

 

治療の質に関しては頑張っていますが、使える材料は限られます。人件費も上げられないし、技工士さんたちや、材料業者さんたちもかなり苦労して経営しています。

 

ま、大変でない仕事なんてありませんから・・・。

 

ときどきマスコミが医院(医であったり、歯であったりですが)の一か月の収入は・・・と言う記事を作ることがありますが、収入とは売上であって利益ではありません。収入マイナス経費の利益が・・・、と言う記事はあまり見ませんね。何故なんでしょうか。

 

歯科の場合、一度のアポイントメントにかかる治療費の平均は4千5百円程(3割なら千5百円)だそうです。治療によっては大きなケースでは患者さんの負担が1万円を超えることもたまにはあります。少ない時は2百円くらいのときもあります。

 

高いと思われるかも知れませんが、患者さんがお支払いになった額の約3倍が私たちの取り分だと思って頂ければ、私たちの収入はわかります。そこから家賃、人件費、技工料金、etcを引くと利益になります。

 

他の国々と比較してしまうと悲しい報酬ですが、日本のみなさんはいつでも(他の国よりはるかに安い費用で)だいたいのケアは受ける権利がある、と言うことは素晴らしいことだと思います。

 

アメリカの大学で救急歯科のローテーションに入った時、簡単に痛みを取ることが出来、治療可能なケースなのに、それをするための費用がないため、(抜歯のほうがはるかに安く済むことも多く)抜かざるをえなかったり、痛み止めを処方することしか出来なかったこともありましたから・・・。

 カテゴリ:アメリカの歯医者の話, 歯の話

急性化膿性根尖性歯周炎

とても治療に苦労する症状の一つです。なんらかの原因で顎の骨の中に埋まっている歯根のまわりに膿がたまり始めて強い痛みや腫れに加え、熱が出ることもあります。

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この写真は歯根嚢胞の例で、急性化膿性根尖性歯周炎とは違う症例ですが、これと同じように歯根のまわりの骨が溶かされ膿がたまります。レントゲン象では似通った映像になります。

 

骨は風船のように膨らみませんから、膿の量が増えるとまわりの骨に強い圧力がかかり、また炎症を起こしていますから、激しい痛みが出ます。

 

上のような写真は虫歯で歯髄が侵され壊死したために細菌が根の先から出て周囲の組織を化膿させたものがこのように映ります。

 

壊死した歯髄を取り除き、根尖まで交通させるとたまった膿が排出されて、圧力が和らぎ、痛みを抑えることが出来ます。

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困るのはこの写真のように過去に虫歯でやられた神経をとる治療(根管治療)がなされた歯にこの症状が出たときです。

 

根管治療が不十分であったり、なんらかの刺激で神経(歯髄)をとったあとに(10年以上たってから出ることもあります)この症状が出ます。

 

痛みをとるためには膿を出して内圧を下げないといけないのですが、まずかぶせてある冠を削って壊してはずさねばなりません。

 

そしてなお写真で歯の根の中心に白く映っているコアーと言う金属(根を補強するためのものです)をなんとかはずさないと膿を抜く排膿路が開きません。これがとても時間のかかる作業になることがあります。

 

それらのことをするのに時間もかかるし削る振動は抑えられません。悪いことにこのような症状のときは炎症のせいで麻酔が非常に効きづらくなっています。

 

冠やコアーを除去するのもかなり難しいケースがあります。根も脆くなっていますから歯根が破折するリスクも高くなります。

 

なにもしなくても激痛に苦しんでいる患者さんは痛みをとるためのそれらの治療の振動での痛みに長い時間耐えなければいけないこともしばしばあります。

 

私たちにとっても患者さんが痛んでいるのを見ながら治療することはとてもつらいことです。でも患者さんを激痛から解放するためには少しでも早く治療を終えるように努めなければなりません。

 

悪いことは重なるもので、こうして苦労して治療を終えても成功率はおそらく7割程度であろうと思われます。2~3割は将来的に抜歯の適応になってしまいます。

 

苦しい治療もある。すべて治せる訳でもない。こういう難しい症状に移行しないように祈るばかりです。そしてそれらは殆どのケースで小さな虫歯から始まるのだ、と言うことを忘れないようにして頂けたら、と願っています。

 カテゴリ:歯の話

一度治したのになんでまた虫歯に

「よく磨いてるのになんで虫歯になるの?」と同様によく患者さんに聞かれる話です。

 

いろんな理由がありますよ。歯がある限り状況によって治した歯がまた虫歯になりえます。

 

でも思うのは、例えば癌の治療に成功しても数年して再発することもあるではないですか?

 

そういうことには皆さん疑問を持たないのになぜ歯に関してはこのような疑問を持たれるのかそれが私にとっては不思議でなりません。

 

病気になるとお医者さんの言うことは良く聞くのに、歯医者の言う事はあまり聞いてもらえないのも残念です。

 カテゴリ:歯の話

ちゃんと歯を磨いてるのに虫歯になる話

よく聞く話です。知らないうちに虫歯が出来ていた時に「ちゃんと磨いてるんだけどなぁ、なんで磨いてるのに虫歯出来るんですか?」と聞く方が時々いらっしゃいます。

 

ちゃんと磨いているのに・・・、不思議なんでしょうね。なぜ虫歯が出来るか?というと、磨けていないからです。

 

毎日歯磨きしているという事は、きちんと磨けているとは限らないという事です。きれいに磨いてプラーク(歯垢)をきれいに取り除く事は、皆さんが思っているよりはるかに難しいからです。

 

まず、時間がかかります。また、時間をいくらかけても磨きたい場所、歯垢がついている場所に歯ブラシが当たっていなければ何時間みがいてもそこは清掃できません。

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「いつもよく磨いている」と豪語する方の口腔内を拝見すると、磨き残しのプラークを簡単に発見できることが殆どです。歯の表面についているプラークを器具でこすり取ってお見せすると、やっと納得されます。

 

プラークが介在しなければ虫歯は出来ません。自分に自信を持ちすぎず、正しい清掃法を習得してください。

 

それでもなお虫歯が出来る可能性はあります。100パーセント完璧にすることは至難の業なのですから。必ず検診はなさって頂ければ幸いです。

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私は寝る前に10分ほどかけて歯ブラシ、デンタルフロス、電動歯ブラシ等を使用して清掃しています。でも完璧には出来ていないと思います。

 カテゴリ:歯の話

子供にもわかるように

歯の治療の事、状態などを患者さんに説明するときに相手は専門家ではないのだから少しでもわかりやすく話すように心がけています。

 

でも最近(いまさらですが)気づいたのですが、話しかたによっては相手にいやな気にさせることもあるのですね。

 

毎回来るたびに同じ事を聞く患者さんもいて、ついつい「わかりやすく」が度を越すと、「馬鹿にされている」ように思われてしまうかも知れません。

 

反省の日々です。

 カテゴリ:日々のこと, 歯の話

深沢七郎・楢山節考

深沢七郎さんと言う小説家がいました。私が高校生の時に東武線曳舟駅前で(今はスカイツリーラインと言うんですかね)たい焼き屋を開きました。夢屋と言いました。今スカイツリーがある押上の隣です。

 

高校通学の降車駅でしたから、同級生はみんなそこで鯛焼き買ったことあるんじゃないかなぁ。おいしい餡子がしっぽまでたっぷり入っていて(しっぽにあんこ入れるのは邪道だ!と言うやつもいましたが)うまかったです。

 

ときどき店の奥に深沢さんがいるのを見ました。実は私はそれまで深沢さんの事知らなくて、同級生が有名な小説家だということを教えてくれてそれで知ったんです。フラメンコギターの名手としても有名だったそうです。

 

楢山節考とか笛吹川とか読みました。だいぶあとで、確か私が歯医者になったころでしょうか、楢山節考が緒方拳主演で映画化されました。(3度目の映画化だそうです)

 

その映画の為に女優の坂本スミ子さんは、今村昌平監督から「歯を抜いて来て下さい」と言われたそうです。

 

姥捨山が題材なのですが、老人が歯を失い、食事をとれず弱ってくると姥捨山に連れて行かれます。でも坂本さん扮する女性は歯が丈夫でいつまでもしっかりしています。彼女は自分が姥捨山へ行き、口減らしをしなければ家族が食べるものを欠いて困ることを気にかけ、石で自分の前歯を打ち、歯を抜いたのです。そして息子に自分を山に連れて行くように頼みます。

 

そのシーンの為に坂本スミ子さんは前歯を抜いたのです。私はそれを(テレビの座談会で見たのですが)聞いて、「なんてことしてくれるんだ!」と思いました。

 

自分の身体の一部である親からもらった(神様がくれたのかもしれません)歯を、どこも悪くない歯を抜いてしまうなんて歯医者としては許せない事です。

 

どんなにお金をかけても本物の歯に勝るものはないのですから。でも芸術家にとってはそれをしてでもすばらしい作品を生み出す事が優先されるのでしょうか?ここは価値観の問題ですが、それにしても・・・。確かに命には関わらないかもしれませんが・・・。

 

私はこの映画は見ていません。とても高い評価を勝ち取り、いくつもの賞もとったと記憶していますが、あの深沢さんの淡々とした語り口で人生の悲劇を日々のことのように綴った小説を演じるのは名優といえども難しいのではないかな、と思ったからです。

 

なんて言ったらいいのか・・・、演技をした時点で、演ずる事によって・・・、深沢さんの本の良さがひとつ消されてしまうような気がしたのです。

 

母親を置いて帰り道、雪が降りはじめます。一度置いてきた者の所へ戻るのはご法度なのですが、息子は戻ります。母親は来るな!と手を振ります。それに向かって「おっかぁ、よかったなぁ」と声をかけます。(飢えてカラスにつつかれながら死んで行くのではなく、寒さで凍えて早く死ねるからです。)・・・こんなラストシーンだったような気がします。淡々と語られます。

 カテゴリ:よもやま歯なし, 歯の話

歯周病は治る?

最近は歯周病と言う病名は広く知られるようになりました。おそらく我々歯医者よりも歯科関連の製品メーカーのコマーシャル等のプロモーションの方が、その名前を知らしめるために大きな貢献をしていると思います。

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歯周病は治るんでしょうか?「治る」、「治癒」等の言葉の定義にもよりますが、元通りに治るという意味で使うのなら、残念ながら治る可能性は非常に少ないでしょう。

 

ごく初期の歯肉炎ならともかく、骨吸収を伴う中度~重度の歯周炎は治りません。歯周病によって失われた歯槽骨は殆どもとに戻ることは期待できません。

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ある一定の適応症の範囲では、かなり以前から「GTR法」、「GBR法」、「エムドゲイン」、「骨移植」etc. の治療法である程度の歯周の骨再生は可能でしたが、元通りに・・・、となると難しいところがあります。

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歯周病の治療は基本的には病気の原因となるものを取り除き、炎症を起こし骨吸収が進行しつつある歯周組織の病的な状況を改善させ、健康な状態にもって行く・・・、事です。

 

外科的な手術を行う(もちろん歯周病の専門医に任せたいです)こともありますが、多くのケースで、基本的な歯周ポケット掻把だけしっかり行った場合と比べて、予後はあまり変わらないと言うデータがあるそうです。(アメリカで私と同窓で、その後向こうの歯周病専門医の資格をとった友人にだいぶ前に聞いたことです)

 

治療により病原である縁下歯石を除去し、汚染されていた歯根のセメント質の表面を滑沢にすることで、歯ぐきの炎症はおさまり引き締まって(やや退縮します)歯周ポケットは浅くなり、また歯肉が緩んでいた時よりもポケット内にプラークが入りずらくなります。

 

その健康的な状態を維持出来れば治療は成功ですが、それがまた難しい。病気になる前に比べると骨の支えは弱くなっていますが、それ以上悪くしない為には想像以上に良く歯磨きなどのセルフケアをしなければなりませんが、なかなかやって下さる方は少ないです。

 

そして治療に終わりはありません。その患者さんの症状によって、3か月、2か月に一度は検診をしてチェックするとともに、自分で清掃出来ないポケット内を機械的に清掃してもらう必要があります。

 

それを続けて下さった患者さんたちはいい結果を生んでいることが多いですが、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」方も多く、そういう方は何年もたってから悪い状態で来院されて後悔なさることになります。

 

体のほかの病気、糖尿病であったり、高血圧であったり、多々の病気において病状が安定していてもずっと(多くの場合で一生ですね)定期的に通院しなければならないことと同じ事なのですが、なぜか歯医者の言うことは聞いてもらえないことも多くとても残念に思います。それにより悪くしないようにできた筈の病気を悪化させてしまう患者さんが多くいらっしゃいます。

 

ちなみに歯周病と言う病名をみなさんによく周知してくれたコマーシャルはいっぱいありますが、残念ながら、宣伝されている薬や用品だけでは歯周病は良くすることは出来ません。なにもしないよりはいいでしょうが、歯科の治療マニュアルに沿って治療を受けることが大事です。薬で簡単に治せるのならどんなに私たちも楽な事でしょうか?

 カテゴリ:歯の話

小児歯科医の最大の敵

大学で小児歯科のクラスで習った事です。小児歯科医の最大の敵は患者さん(子供)の御両親(または保護者)です。

 

言う必要のない事、言ってはいけない事を子供に言って、歯医者に来る前から歯医者はこわいものだと思い込ませてしまいます。おまけに診療室に子供と一緒に入りたがります。

 

「歯医者に行こう、怖くないから大丈夫だよ!」歯医者がなにかもわからない子供に、まず、歯医者って怖いかもしれない、と思わせる言葉です。「痛くないから」・・・、えっ!痛くされるのかなぁ?

 

「いう事きかないと、歯医者さんにつれてくよ!」・・・、最悪です。やっと治療を終わらせると、「痛くなかったでしょ?」・・・次は痛いのかなぁ?「よく我慢できたね」・・・等々。

 

「歯医者に行けば、虫歯を治してくれるだけじゃなく、帰りにおもちゃまでくれるんだ、」くらいのこと言っておけばいいのに、よけいな事を話してかまえさせてしまわないように気をつけて下さいね。

 

終わってからも特に変わったことしてないわけですから、普通に、「歯を強くしてもらってよかったね」くらいにして、大げさに「頑張ったね!」とか、事を大きくすることないんです。歯医者に行くことを、特別なことにしないようにすることが大切です。

 

そして、日本でもそうだと思いますが、アメリカの小児歯科では、絶対に保護者を診療室に入れません。子供が甘えてしまうからです。親が助けてくれると思うのです。一番いい方法は泣くことだと、子供たちは経験上知っています。親もそれには弱いんですね。

 

私も娘が小さい時に、スイミングスクールでの練習を見学に行ったときに、かわいそうで(まだ泳げない頃で苦しそうだったんですね)、もうスイミングスクールやめさせろ!などと言ってしまった覚えがあります。(恥ずかしいですが)

 

小児科の先生たちは、子供たちが怖がらないよう、痛くないよう、歯医者を嫌いにならないように治療する方法を学んで来ています。そのじゃまをしないように親御さんたちも気を付けなければいけないことを知っていただきたいと思います。

 

ちなみに私は小児歯科の訓練は受けておりません。出来れば、当クリニックにはお子さんをお連れにならないようにして頂ければ幸いです。私は子供が歯医者嫌いになった理由になりたくありませんから。(まことに申し訳ありません)

 

 

 カテゴリ:歯の話

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